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 実用新案権者は、業として登録実用新案の実施をする権利を専有し、その侵害に対しては、差止請求権、損害賠償請求権、不当利得返還請求権などにより権利者が保護されることになります(実用新案法第16条、第27条等)が、原則として基礎的要件を満たしている出願については、実体審査をすることなく無審査で設定の登録がされるようになっています。
 そのため、権利の有効性に関して個々の判断が分かれるであろうことは、往々にして考えられることです。このようなとき、権利行使を行う権利者及び第三者に不測の侵害を与えるおそれがあるために、当事者にとって客観的な判断材料を与える必要があるとの考え方から、公的な評価という意味で、実用新案の技術評価制度を設けています。実用新案権者が自己の権利を行使し、差止請求などを行う場合には、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければ、その権利を行使することはできません(実用新案法第29条の2)。基礎的要件を満たしている出願については、無審査により実用新案権の設定の登録が受けられ、その実用新案権が新規性や進歩性を有しているものなのか否かについては判断されていないために、証明責任の転換を図る意味から、実用新案技術評価書を相手方に提示し警告すべきことを義務づけています。
 実用新案技術評価書には、その考案の新規性や進歩性などについて評価されていますので、評価書に記載されている事項等をご自分でよく吟味して権利を行使するように注意していかなければなりません。
 自らの権利の有効性について、十分に吟味せずに権利を行使し、又はその警告をした後に、行使した自己の実用新案権が無効となった場合には、権利者は相手方に与えた損害を賠償する責任が生じます(実用新案法第29条の3)ので、権利の濫用には十分に注意しなければなりません。