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知的財産分野におけるタイムスタンプの活用事例

 
自社技術/他社技術のコンタミネーションをタイムスタンプで防止
京セラ株式会社



お話を伺った方:
法務知的財産本部 知的財産部
知財2部 2課責任者 則松 俊英 様

はじめに、タイムスタンプ導入の時期と目的について教えてください。

当社では、2013年頃からいくつかの事業部門においてタイムスタンプの検討・利用が始まり、2016年4月には電子部品事業本部の一部事業部においてタイムスタンプの利用を開始しました。この事業部では業界の特性により、従前から公証人の確定日付を利用していましたが、それをタイムスタンプに切り替えた形です。

業界の特性とは、どのようなものでしょうか。

この事業部が扱う製品には、少ない部品点数からなり、さらに形状が性能に直結するという特徴があります。換言すれば、リバースエンジニアリングが可能であり、模倣品が出現し易い環境にあります。事実として、過去には外国において模倣品によりシェアの低下を招くケースもありました(その時は、特許と意匠の両面から主張を行い、交渉により模造品の製造販売中止へと繋げることができました)。また専門性の観点から、部品の製造や組立を、競合他社の製品も扱う協力会社に依頼する事があり、協力会社における自社・他社情報のコンタミネーションに対する配慮が必要となっています。

このような業界では、ごく初期の製品コンセプト段階から、製造・販売・開発の担当者がそろって情報の保護・管理に努めることが極めて重要だと考えています。例えば、社外に出る自社の技術情報(設計など)は自社のものであること、及び、社内に入る他社の技術情報は他社のものであることをしっかり区別できるようにすることが最低限必要です。タイムスタンプの導入には、事業部において自社技術と他社技術を区別して扱う認識がより一層向上することへの期待も、背景としてありました。

どのような文書に対してタイムスタンプを付与しているのでしょうか。

例えば、外部との取り交わしを示す資料(議事録など)、コンセプト段階の資料(構想図など)、営業資料を含む外部向けの資料等は、タイムスタンプの付与が必須と考えています。これらの資料には、「年月日」「社名/作成者/承認者印」「Confidential」等を明記するようにポリシーを作って周知しています。

タイムスタンプ付与までの流れを教えてください。

この事業部のケースでは営業部門を含めた各部門において、作成や受領した文書からタイムスタンプを付与する対象書類を抽出してもらいます。そして、抽出された文書を各部署から知財担当部門に送付して、タイムスタンプの付与が行われます。タイムスタンプを付与するか判断に迷う場合もあるでしょうから、各部署には迷ったらタイムスタンプを付与する様に依頼しています。

なお現在、社内の誰もが任意のタイミングで自らタイムスタンプ付与の処理を実施するとともに、タイムスタンプ取得ファイルを自動的に整理・管理できる社内システムの構築に着手しています。近い将来、全社員がより容易かつ積極的にタイムスタンプを取得できる環境を実現させたいと考えています。

タイムスタンプを導入してどのようなメリットを感じていますか。

タイムスタンプを導入する以前は、主に公証人の確定日付を利用していました。公証人の確定日付を付与するには、印刷・製本して、業務時間中に公証役場に外出する必要があります。タイムスタンプは社内で付与できるため、依頼する側・受ける側にとっても身近になりました。さらに夜や出張先からの依頼にも対応できることは、非常にメリットに感じています。データ形式も幅広いため、動画等にも対応できるメリットもあります。また、知財担当部門に事業部内の技術・営業情報が集まることからナレッジが一元化される効果があります。知財担当部門が情報を見ることで埋もれかけていた発明を発掘できたこともあり、企業として大きなメリットを感じています。

INPITタイムスタンプ保管サービスについてどのように利用されていますか。

知財担当者が月1回程度、発行されたタイムスタンプを預け入れています。公的機関であるINPITがタイムスタンプの利用にさらなる安心・安全を提供している点に期待しています。

ありがとうございました。
企業概要
名称 京セラ株式会社
資本金 115,703百万円
従業員 75,940人
事業内容 産業・自動車用部品、半導体関連部品、電子デバイス、コミュニケーション、ドキュメントソリューション、生活・環境関連製品の製造・販売 等
URL https://www.kyocera.co.jp/

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[最終更新日:2019年3月7日]

[この記事に関するお問合わせ先]
知財戦略部 営業秘密管理担当
電話:03-3581-1101 内線3841