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知的財産戦略アドバイザーのコラムバックナンバー(第11~20回)

 本コラムでは、営業秘密・知財戦略相談窓口の知的財産戦略アドバイザーが、日々の相談業務の中で感じたことや考えていることから、営業秘密を管理・活用する上で皆様のお役に立つようなちょっとした豆知識等を紹介しています。
※ 本コラムの内容は執筆者個人の意見を表すものであり、当館の見解を示すものではありません。
※ 仕様上、文字をかな表記にしている箇所がございますのでご了承ください。

 

第20回 トラブル事例を身近に感じてもらうために/飯塚アドバイザー

決して対岸の火事ではありません

精密機器メーカーから食品加工業など、様々な業種の会社を訪問し、営業秘密管理の必要性や整備の進め方を説明しております。
その中で「トラブル事例」は特に効果的なコンテンツのひとつです。
営業秘密管理をしていない会社が、トラブルに巻き込まれて利益や信用を失ってしまう危険性があることを、事例でお伝えするのに役立っております。

この説明によって、「『ライバルに知られては困る情報』は営業秘密として管理しよう!」「第一歩、できることから取組を始めよう!」といっていただければ、私たちにとってまずは成功です。具体的な取り組みのご支援に進むことができます。

しかしながら、「自分の会社には『トラブル事例』のような営業秘密はない」「まったく関係のない業種(対岸の火事)の『トラブル事例』を説明されてもピンとこない」という感想を持たれては、貴重な時間をいただいてお伝えする内容としても、具体的な取り組みの支援を進める上でも、不十分であったということになります。

ちょっとした工夫でも「自分事」として伝わりかたは随分違ってくるものです。
「ライバルに知られては困る情報」はどんな業種にもありますし、そのような情報の漏えいトラブルは決して対岸の火事ではありません。
ですから、訪問先の会社に、より具体的に、わかりやすく、理解いただけるように試行錯誤で工夫を重ねています。

トラブル事例の対象を、訪問先が関係する業種で使われている同条件の対象に読み替えてみる

ここで、「読み替える」という言葉について、〈大辞林〉では、「法令の条文中の語句に、同じ条件の他の語句をあてはめ、そのまま適用する。」とあります。
法令条文や契約等でよく目にする言葉です。トラブル事例は法令の条文ではありませんが、「文中の語句に、同じ条件の他の語句をあてはめ、そのまま適用する。」という手法が、トラブル事例の内容把握に有効なので、以下「読み替える」を使わせてもらいます。

非常によくある話ではありますが、伝える相手に合わせた内容で説明した方が、一般論で説明するよりもわかりやすくなります。
「トラブル事例」で試みた場合も同様でした。

例えば、「部品メーカーAの例」で「取引先から金型図面の提供を求められた」というトラブル事例について、 B2B(B to B)取引を主としたソフトウエア開発会社に対しては、
『取引先からソースコードの提供を求められた』、『取引先からプロトコルコード解説書の提供を求められた』と対象(「金型図面」)を読み替える。
機器メーカーに対しては、『取引先からオプション○○部品の装着マウント図面の提供を求められた』等に対象を読み替える。
また、B2C(B to C)取引を主とした食品加工会社に対しては、
『取引先からレシピの提供を求められた』、『取引先から素材仕入先の提供を求められた』と対象を読み替える。
パッケージデザイン制作会社に対しては、『取引先からデザインコンセプトの提供を求められた』等に対象を読み替える。

このようにトラブル事例の対象を読み替えて紹介し、その対応策を解説したところ、「今、まさにこのようなことを取引先から要求されている。どう対処したらよいか?」「申し出を断りたいが、うまい方法はないか?」など、実際に直面している課題に基づいて質問が寄せられ、具体的な議論ができるようになりました。
トラブル事例の対象を、訪問先が関係する業種で使われる対象に読み替えることで、うまく「自分事」として伝えることができたと実感しております。

こうした読み替えを可能にするために、訪問前にはホームページや特許、商標等の出願状況、権利化状況を確認したり、関連する文献を確認したりする等、入念な下調べをしています。そして、私たちがもつ企業経験や多様な会社への支援経験から、事業の中でどのような情報(営業秘密)を取り扱うだろうかとイメージを膨らませて、トラブル事例の読み替えをおこないます。

「自分事」として理解されたことによる波及効果も期待

このようにトラブル事例の対象を読み替えることで、どのような業種で起こったトラブルでも、説明を聞いた社員には「自分事」のトラブルとして、強い問題意識をもって認識してもらうことができると考えております。
その社員が現場に戻り、周囲の社員にその意識を共有してもらえれば、社内の営業秘密管理の意識が向上していくことも期待できます。
こうした工夫の手ごたえは、参加者の様子や質問から感じており、今後多くの機会を通じて実践していきたいと考えています。

「営業秘密・知財戦略相談窓口」に支援をご依頼いただければ、訪問先に応じてカスタマイズした内容で、わかりやすくご説明いたします。是非ご活用ください。

 

番外編 営業秘密110番 事務局のコラム

こんにちは、事務局です

 営業秘密110番の知的財産戦略アドバイザーがちょっと役立つ豆知識などをご紹介する本コラムですが、次回で早くも20回目を迎えます。

 今回は、番外編として、営業秘密110番の事務局より日々の業務で考えたり感じたりしていることをご紹介します。営業秘密110番を利用したことがないという方には少しでも身近に感じていただくお話を、利用したことがあるという方には少々のウラ話をお伝えできればと思います。

1500件以上の相談実績

「2018年度の相談件数が急増したけど、一体何があったの!?」

 ある日、事業紹介に伺った関係先でこんなことを聞かれました。
 直近の相談件数(営業秘密官民フォーラム(経済産業省)への報告内容)をみると、2017年度は430件、2018年度は666件と増加しています。営業秘密の漏えい事件が度々ニュースに取り上げられる昨今ですから、どうして急増したの?と心配される方がいらっしゃるのももっともです。

 営業秘密の漏えいが増えた!という訳ではありませんので、ご安心ください。

 INPITでは、全国47都道府県に設置されたINPIT知財総合支援窓口(ウェブページ)においても、2018年度から年度を通じて「営業秘密管理の周知・普及」や「社内ルールの整備支援」への対応を実施し、日本全国、より多くの会社に営業秘密管理のご支援が行き届くよう取り組んでいます。

 今では、各地域の知財総合支援窓口の活動が起点となり、それぞれの地域におけるきめ細やかな対応に力強く後押しされながら、協働作業にてご支援を進めることが多くなりました。このような背景から、営業秘密110番への相談に繋がる案件が増え、営業秘密110番を開設した2015年2月からの累計はついに1500件を超えました。

 「どんな業種・規模の会社にも秘密として管理すべき情報はある」
 「情報漏えいで被る「高い授業料」を払う前に事前策を講じて欲しい」
 「会社の実情に応じて、まずはできることから具体策をご支援したい」

 こうしたことを、アドバイザーから中小企業の事業現場を聞く中で、私たち事務局も強く感じています。そして、会社の取り組みを後押しするために必要な具体的な事例と対応策等の十分な相談経験を私たち営業秘密110番は蓄積しています。

 会社の秘密を管理することによって、取引先からの信用が向上することが期待できます。私たち事務局としては、近い将来、「秘密管理が取引環境において当たり前の前提」となることを思い描きながら、日々、一社一社、アドバイザーとともにみなさまのご相談・支援に対応して参ります。

 ぜひ営業秘密・知財戦略相談窓口(営業秘密110番)をご利用ください。

 ※ 番外編は、不定期での掲載を予定しています。

 

第19回 会社の大事な秘密を「モレなく」管理するために/北村アドバイザー

情報は本来「形のないもの」

みなさんの会社で、ライバル会社に知られては困る大事な情報にはどんなものがあるでしょうか。また、そのような情報は会社のどこにあるでしょうか。そのほとんどが営業秘密として管理すべきものです。

ですから、「会社にとって大事な情報」の洗い出しは、秘密管理の活動において最も重要な作業です。

洗い出しによって情報をリスト化できれば、何が「会社にとって大事な情報」であるかを全社員で共有し、同じ認識のもとに情報を扱うことができます。このことが、情報漏えいの防止に繋がるのです。

支援で中小企業を訪問し、営業秘密管理の取り組みに納得いただいた上で、「次回までに会社の大事な情報をリストアップしてください」とお願いすると、大抵の場合、紙ファイルや電子データを対象にしたリスト化がスタートします。

しかし、情報は本来「形のないもの」です。

上記のような紙ファイルや電子データは、「会社にとって大事な情報」が文字や図などを利用して目に見える形となった一つの姿でしかありません。それ以外で社内に存在するものも「モレなく」洗い出しておかなければ、全社員が「何が会社の秘密であるか」を認識し、そうした情報を「モレなく」管理することはできません。

実際の支援では、製造現場を一緒に歩いたり、社長や実務担当者に企業の状況を事情聴取したりしながら、「会社にとって大事な情報」とは何か、それらがどこに存在しているかを一緒に考えながら助言をしています。

製造設備や治工具、金型、試作品などの物件

製造業の会社を支援していて、洗い出し作業の際、つい見逃しがちなものとして、製造設備や治工具、金型、試作品などの物件があります。

多くのメーカーでは、独自の工夫が施された製造設備や治工具があり、また長年の工夫で最適なパラメータを見出していることがほとんどです。それらが無造作に製造現場や事務所に置かれていたりすることはないでしょうか。

また、試作品が会社の秘密であるという認識が希薄で「無防備に試作品を提示してしまったら、それをヒントに取引先が勝手に類似品を量産・販売した」、「連絡がなくなったと思ったら特許出願されていた」ということも実際に起こっています。

このような「会社にとって大事な情報」が姿・形を変えて表れている製造設備や治工具、金型、試作品などの物件についても、工場見学などの機会にライバル会社に模倣されないように会社の大事な秘密として「モレなく」管理対象とすることが必要です。こうした物件については、物件がある作業場などに「立入禁止」、「写真撮影禁止」の掲示をすることや、見学の受け入れ時に、部外者の目に入らないようにシートで覆うといった対策をとりましょう。

頭の中だけにある情報

次に、従業員の頭の中だけにある情報も「モレなく」重要です。

普段の支援業務で多くの会社を訪問していますが、技術ノウハウや製造レシピ、得意先情報などが、文書などの「形のあるもの」になっていないことが間々あります。

頭の中だけにある情報を「形のあるもの」として会社の秘密のリストに加えることができれば、「◯◯の加工方法」といったカテゴリーとしてだけでなく、会社の秘密を具体的に特定して全社員に認識させることができるようになります。そうすると、共同研究開発や退職者の対応において守秘義務の対象を明確にできますし、いざ問題発生となった際に「それが秘密とは思わなかった」という言い逃れの常套句を使わせないといった点でメリットが期待できます。

一方で、頭の中だけにある情報を「形のあるもの」とすることは手間がかかることです。訪問先でご紹介すると敬遠されることが多くあります。そのような中でも「世代交代、事業継承の準備にもなり、一石二鳥」と前向きな回答をいただくことがあります。一社一社の状況をよくお聞きして、できることから、必要な取り組みをご支援しよう、と熱意を新たにする瞬間です。

まずはできる範囲から

まずはできる範囲からで大丈夫です。会社の情報の洗い出しをはじめましょう。

INPIT営業秘密・知財戦略相談窓口では、洗い出した情報をリストとして書き出すための実務的なツールを用意しています。多くの中小企業支援の経験を踏まえ、第三者としての視点を交えて、どんな情報を洗い出したら良いか、具体的にご支援いたします。お困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

一度モレてしまった情報は決して元には戻りません。
そのようなことが無いように会社の大事な秘密を「モレなく」管理していきましょう。

 

第18回 「ワークショップ」へようこそ/小原アドバイザー

ドッキリ体験

先日、メーカーの経営幹部10数名が参加する「中小企業知財勉強会」の講師を務める機会がありました。

さほど広くない会場に赴くと、テレビ取材クルーが待ち構えています。

「えっー! 聞いてないよ! 知ってたら、一張羅のスーツでキメて来たのに」と、悔やんでも「あとの祭」。

当日夕方の情報番組と、21時前のNHKニュースで、勉強会風景、講師(筆者)および受講者のインタビューが、放映されました。

テキストの、最も重要な箇所が大写しにされ、私へのインタビューも、訴えたいポイントを逃さず的確に、プロの早技で、見事に編集されています。

そして、
「これまでは、日常の業務で、重要な企業情報や契約を、何気なく取り扱って来た。今後は、この勉強会で学んだ事柄を、肝に銘じて、注意深く仕事を進めたい。」との、参加者の端的なコメントで、締め括られていました。

話し手の「思い」が、受講者に「伝わった」ことが、テレビ画面でハッキリ認識できた、講師冥利に尽きるシーンでした。

受講者参加型セミナー

従来は、われわれ講師が、壇上から一方的に受講者に語りかける「座学スタイル」オンリーでしたが、試験的に「グループ学習形式」のセミナーを、不定期に開催しています。

前段で、営業秘密の重要事項を30分程度概説した後、数名のグループに分かれ、

まず、
・知的財産全般について、よくある誤解
・共同開発を題材にした契約の理解

に関するクイズについて、議論をします。

とらえ方によって、複数の解答がある設問ゆえ、議論百出。
グループメンバーが、ここで、お互いの「知識レベル・人となり」を知り、距離をグーンと縮める効果も狙っています。

チーム内で、自由に意見を出しやすい雰囲気が、でき上がったところで、

本題の
「実務で起きやすい、企業情報にまつわるトラブル」に関する、事例をベースにした数種類の設問に、順次取り組みます。

数人寄れば・・・

グループは、専門知識・実務経験豊富なベテランから、知財初心者の若手総務部員まで、玉石混交です。

初学者が、素朴な疑問をメンバーに投げかけ、ベテランが、それを平易に親切に解説してあげるようなシーンが、よく見られます。

以前読んだ、英文学者外山滋比古氏の著書『思考の整理学』に、「一人一人が持っているセレンディピティー(Serendipity 偶然の発見)の確率は、指数関数的に高まる。三人いると三倍でなく三乗、五人なら五乗になる」とありました。

「三人寄れば、文殊の知恵」 「個人(独力)では辿(たど)り着けない発想や考えが得られる」

ワークショップでは、まさにこの効果が、例外なくハッキリ現れます。

グループが「異業種メンバー」で構成されているときには、それが、さらに顕著です。

以前、私がメーカーのサラリーマンだったときには、社内研修等でのグループ学習の効用を、それほど感じませんでした。

「新しいアイデアは、同質な人間どうしでは、生まれにくい」のかも知れません。

異業種交流「反省会?」へ・・・

講師が思いつかなかった「秀逸な解答」が飛び出すことも、少なくありません。

それらは、次回以降の「エクセレント模範解答」として、ありがたく、いただいておきます。

座学形式のセミナーでは、終了後に、少数の質問者のみが会場に残り、それ以外の大多数の受講者は「サッサと家路につく」のが通常です。

一方、ワークショップ型では、いくつかのチームが教室に居残って、メンバーどうしの情報交換などが、終了後も、継続している光景が、よく見られます。

それが高じて「場所を変え、反省会(飲み屋での懇親会)をやろうよ! 講師も来ませんか?」と、お座敷がかかることも、少なくありません。

セミナーへの、いざない

多くのワークショップ型セミナー受講者から「講義形式と比べて、格段に理解が深まった」との感想が、寄せられています。
私たちにも「リアルタイムに、参加のみなさんの理解度が把握できる」大きなメリットが、あります。

高評を得られ、講師としても手応えを感じるので、順次このスタイルを増やしたいと、考えています。

議論に加わるのが苦手な参加者が「一人ぼっちにならぬような」配慮も、いたします。

みなさま、ぜひ奮ってご参加ください。
会場で、お待ちしています。

 

第17回 企業訪問での「困った」/小原アドバイザー

初回にかける想い

全国各地の企業を訪問し、事業の課題を仔細にインタビューし、現場を拝見し、それぞれの会社事情・規模に適した情報管理の必要性を説き、活動スタートに繋げるのが、私たちアドバイザーの主たる業務の一つです。

同僚アドバイザーが、以前の本コラムで「保険のようなもの」と表現したように、営業秘密管理は「転ばぬ先の杖」のリスク対策活動です。

いつ起きるか分からない(起きないかもしれない)「情報漏洩事件」の実例などを織り交ぜた話題を、会社運営に一家言を持つ(しかし知財には縁遠い)初対面の中小企業経営者に、投げかけます。

そして「自分たちも、取り組むべきだな」と思って貰える段階まで、短時間の滞在中に漕ぎ着けられれば「訪問目的達成」

逆に、しくじったら、そこで「ジ・エンド」、
「次」はありません。

思わぬ先制攻(口)撃

先日、家業を多角的に発展させている、若き二代目社長に、お目にかかった時のことです。

開口一番、

  • いまや、我々デジタル世代に、社会は大きく変革しつつある、先代(父親)は企業秘密漏洩に過敏であったが、それは古きアナログ時代の発想だ
  • 従業員を疑うなんて非道徳、経営者の資質を問われかねない
  • 善い社員ばかりだ
    たった一人の不心得者のために新しい規則を作って、大多数の良識ある者を縛るのは、我が経営哲学に反する
  • SNSの時代、漏れたら(情報は、世界中に瞬時に拡散し)「どうしようもない」じゃないか
  • 「営業秘密管理は、保険のようなもの」ならば、起きないかも知れない情報漏洩事故の備えに費やすエネルギーは、いま事業に直接的に役立つコトに注ぐべき
    病気になったら、そのときに全力で治療に専念すればよいのだ

と、滔々(とうとう)と持論を述べ立てられてしまいました。

「聴く」に徹する

平静を装いつつも、思わぬ初っ端からの「先制パンチ」に周章狼狽。

こちらも伝えたいコトは山ほどあるのですが、反論は封印し、まずは聴き手に徹し、発言の中からキーワードを抜き出し、相槌を打ちながらそれらを反復します。

さらに「いま仰ったコトは、こういう風にも言えますね」と、相手への理解を示した上で、社長のスタンスを確認しながら、少しずつベクトル修正を試みました。

そして「着地点」へ

変化の激しい情報化時代の経営を、真摯に考えている若手社長だからこそ「企業秘密が会社のだいじな資産である」ことは、じゅうぶんに認識されています。

次第に、社長から「我が社の、虎の子情報は…」というような話題が出はじめ、それに呼応した営業秘密視点からの私の意見にも耳を傾けて下さるようになり、

最後には
「一気にはムリかも知れないが、当社でも、できるところから着手すべきだね」とのコメントを貰えるに至りました。

「未明に家を出、資料がギッシリ詰まったカバンを抱え、数時間かけて訪ねた甲斐があった 」と、思う瞬間です。

「転ばぬ先の杖が、いつかどこかで役に立つ」
その信念で、東奔西走の日々を過ごしています。

 

第16回 キックオフミーティングのすすめ~営業秘密として情報を管理する上で重要なこと~/小高アドバイザー

1.情報管理を始める際に

 昨年7月に知財戦略アドバイザーに就任して1年半が経ちました。これまでの間、多くの中小企業を訪問し、会社の大事な情報を営業秘密として管理する重要性を多くの経営者や従業員を相手に説明してきました。そして、私の話に納得をいただいてご支援をした結果、社内の情報管理体制が整い、社内情報を営業秘密として管理し始めた企業が多々あります。
 それでは、社内の情報管理体制を整備した上で、営業秘密として情報管理を始める際に重要となることとは何でしょうか。

2.営業秘密としての情報管理

 「営業秘密」というのは不正競争防止法に定義のある法律用語です。万一大事な情報が流出した場合に裁判で「営業秘密」と認められれば、民事的/刑事的に保護を受ける道が拓けるのですが、そのためには、3つの要件をすべて満たす必要があります。その中でも、特に大事なのが「秘密管理性」というものです。この要件の判断には、対象となる情報が従業員から見て秘密として管理されていたと認識できたのかどうかが重要なポイントとなります。
 営業秘密として情報の管理を行うには、一般的には社内情報の洗い出し(リストアップ)を行い、秘密のレベル(極秘、社外秘、一般情報等)を区分けする必要があります。そして、それらの秘密情報を対象とした取り扱いルールを「情報管理規程」として定めて、その内容を全ての従業員に周知徹底していきます。

3.規程は作成したものの・・・

 私がはじめて支援に伺った企業の中には、社長や経営幹部の方だけで情報管理規程を作成し、これで良し、としていたケースがありました。みなさんはこれで営業秘密の管理として十分だと思いますか?
 この段階では、作成した規程は従業員に浸透していないですし、秘密して管理すべき社内情報、すなわち営業秘密が何なのかが従業員には認識されていません。営業秘密としての管理はこれでは不十分です。裁判になれば、不十分な管理状況を理由にして「それが秘密とは思わなかった」と言い逃れをされてしまいます。
 秘密情報を取り扱うルールとして作成する情報管理規程ですが、多くは社内規則の一つとして整備されます。社内規則ですから、単に規程を作成するだけではなく、従業員の皆様に説明しその内容が全員に共有されていることが重要なのです。

4.キックオフミーティング

 私ども知財戦略アドバイザーは作成した情報管理規程を従業員の皆様に十分ご理解いただくことが、営業秘密としての情報管理を始める上で必須と考えており、支援を行った企業の皆様には、「キックオフミーティング」の開催を提案しております。
 このミーティングでは、従業員の皆様に営業秘密として情報を管理することの大切さについて簡単なセミナーを行い、さらに作成した情報管理規程について解説を行います。そして、社長を始め、社内全員で意識を共有した上で、情報管理を行っていくことを勧めています。
 皆様の企業でも、営業秘密として情報管理を行う際にどのようにすすめたらよいか、私どもにご相談いただければ、全国47都道府県に設置したINPIT知財総合支援窓口とも連携して貴社に応じた進め方で支援させていただきます。

 

第15回 身の丈に合った営業秘密管理って・・・/飯塚アドバイザー

身の丈に合った営業秘密管理とは

 企業訪問の際、つい意気込んで 新聞沙汰になった「大企業の情報漏洩事件」を紹介したり、「営業秘密の三要件とは・・・」などと説明を始めてしまいがちです。
  そんなとき聞いていただいた方から、「この会社規模で無理なく運用できる 身の丈にあった営業秘密管理方法を提案してほしい。」とリクエストされます。

 企業秘密を法律(不正競争防止法)で保護するには、従業員がその秘密書類に接したときに、「この書類は会社が秘密として管理しているもの」と認識できること(これを「秘密管理性」といいます)が必要です。

 営業秘密管理措置としては、以下の処置が広く知られています
 ・秘密とする文書に「マル秘」や「Confidential」の透かし印刷やスタンプを押す
 ・秘密管理されている電子データホルダーにはID・パスワードでアクセス制限をかける
 これに加えて、上記「マル秘」等の書類が会社内にあること。そして、その「マル秘」等書類は一般情報・電子データとは分離されて管理されていることを、従業員誰もが認識し管理に協力できればよいのです。

中小企業での営業秘密管理とは

 営業秘密管理は、どこまでやれば安心かなど、完璧を目指せばキリがありません。
 平成27日1月28日に全部改訂された「営業秘密管理指針」(※)の留意事項に「営業秘密が競争力の源泉となる企業、特に中小企業が増加しているが、これらの企業に対して「鉄壁の」営業秘密管理を求めることは現実的ではない。」と記されています。
 大企業でもなかなか実施が困難な「鉄壁の」秘密管理は、中小企業にとっては過剰品質と言えるものです。
 上記の「営業秘密管理指針」では、「これなら、自社でも実施できそう」と思える管理内容を説明しています。20ページ弱の薄い冊子です。是非ご一読ください。

(※)「営業秘密管理指針」/経済産業省HP http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/20150128hontai.pdf

営業秘密管理の原点

 「営業秘密管理」の必要最低限のあるべき姿は、「マル秘表示された書類が、他の一般情報とは分離されて保管されている。そして、会社のだいじな情報が秘密情報として管理され、特定の従業員しかアクセスできないことを社長から新入社員・パート・アルバイトに至るまで全員に認識されている状態」が維持できていることです。

 子供のころによく親から言われた懐かしい言葉、「自分だけの大事なものは、ちゃんとしまっておくこと」、「大事なものが机の上に出しっぱなしだよ」と私は親から注意されたことを思い出します。
 会社の営業秘密情報は、「情報の管理と有効利用のバランスを考慮」することが重要で、この側面では少々利用場面に差異がありますが、整理整頓は営業秘密管理の原点です。

 これを「営業秘密管理」の第一歩として、その後の「マル秘」情報の種類・量の多寡や社内周知規模の変化に応じて管理対象や管理方法が変遷していくものと考えてはいかがでしょうか。

 情報も会社の大事な資産です。この大切な財産を営業秘密として守ることも会社の責務といっても過言ではありません。
 どんな些細なことでも、知財総合支援窓口(各都道府県にあり:ナビダイヤル0570-082100)あるいはINPIT営業秘密・知財戦略相談窓口(03-3581-1101)にお問い合わせください。

 皆様からの ご連絡をお待ちしております。

 

第14回 営業秘密を管理して売り上げを伸ばす!/北村アドバイザー

営業秘密を管理して売り上げを伸ばす!

確実に売り上げを伸ばしたいのであれば、営業秘密の管理をきちんとするのがおすすめです。

営業秘密は、ノウハウや顧客リストなど、誰にも知られたくない、中小企業の事業にとって強みとなる情報です。

その情報をきちんと管理すると、…
中小企業に従事する方にありがちなセールストークや退職者によって、営業秘密が漏れてしまった。
                …なんてこともなくなります。

その情報をきちんと管理しなければ、…
ノウハウなどが漏れてしまい、多くの人が知ってしまうこととなります。
情報としての価値は失われてしまい、その回復は非常に困難なものとなります。
                …ライバル企業の追随を受けて、売り上げは伸びません。

また、ノウハウなどを漏らした中小企業自体もお客さまや取引先などから「秘密情報も管理できない企業」として信用をなくしてしまいます。
最悪、事業の継続ができなくなる可能性もあります。

このようなことが起きないようにしたいですね。

営業秘密は、中小企業にとって競争力の源泉であります。特許権だけが競争力の源泉ではありません。
特許権は、出願から20年でその権利は消滅し、その後は、ライバル企業も自由に使うことができるようになります。
一方、ノウハウなどの営業秘密は、きちんと管理しておけば、20年後においてもずっと独占して実施することができる可能性があります。その結果、その営業秘密を使った商品・サービスの売り上げを伸ばすことができます。
競争力を高めて、確実に売り上げを伸ばすためにも、営業秘密の管理をおすすめします。

中小企業を訪問して感じることですが、社長自らが事業に関するアイデアやコストなどについて、熱意をもって説明してくださることがあります。支援においてお話いただけるのは大変ありがたいですが、営業先でも同様に話されているのではないかと心配します。

営業秘密管理のはじめの一歩として、何が営業秘密かを、社長を含めた社内全体で理解することから始めてはどうでしょうか。社長をはじめ、みなさんの言動が変わってくると思います。

INPIT営業秘密・知財戦略相談窓口では、電話、窓口(対面)での相談対応や、営業秘密管理の重要性を理解してもらうために中小企業を訪問して営業秘密に関する社内セミナーなども実施しています。ぜひご活用ください。

その他、営業秘密管理の体制整備に役立つサンプル規程や契約書のひな形なども用意しています。全国47都道府県に設置されたINPIT知財総合支援窓口とも連携していますので、INPIT知財総合支援窓口、もしくは、営業秘密・知財戦略相談窓口にお気軽にご相談ください。

 

第13回 営業秘密管理とISO9001/古田アドバイザー

営業秘密管理においても通じること

 私が食品機械を製造する中小企業の管理職からINPITの知的財産戦略アドバイザーに転じて約三年半が経ちました。全国各地の中小企業を個別訪問し、営業秘密管理体制構築のお手伝いをするのが現在の私の主要な業務です。
そうした中で、支援を開始した直後、企業の根幹をなす設計・製造情報に関し「何が会社の秘密か」を特定する作業(=技術情報の棚卸し)が難航して暗礁に乗り上げてしまうケースが少なからずあります。
一方で、技術情報の棚卸しが短時間で完了し、次のステップへとスムーズに移行できている企業もあります。そして、後者のグループでは「ISO9001を認証取得している企業が多いこと」が特徴としてあげられます。

 ISO9001は品質マネジメントシステムに関する国際規格です。メーカーでは製品の品質を維持・向上させるためのマネジメントシステムとして認証を受けているケースが大半です。

 ISO9001では、文書化した情報の管理(JIS Q 9001:2015 箇条7.5.3 文書化した情報の管理)が必須となります。
製品や部品の図面、手順書、設計検証ルール、従業員の教育訓練記録など企業におけるあらゆる設計・製造・品質に関する情報の分類・整理を行い、文書化しなければなりません。
そのため、ISO9001の認証を受けている企業は、社内の重要な技術情報のほとんどが明確に抽出・分類・整理されています。実際、私が認証を受けている中小企業を支援した際、「どんな情報がありますか?」とお聞きしますと、ISO9001の管理対象となる文書の一覧表を最初に提示されることがあります。
この中から競合他社に知られては困る情報、すなわち秘密として守るべき情報を選び出していけば、自社の設計・製造に関する営業秘密を決定すること(=営業秘密管理のための台帳作成)が大変スムーズに行えます。

 また、ISO9001は経営トップを頂点とした組織で運用する「トップダウンが基本」のマネジメントシステムです。
営業秘密管理の推進においても同様に「トップの強い意志」が必須となりますので、このことも両者において極めて重要な共通項といえます。
そして、ISO9001の品質目標を達成し、品質マネジメントシステムが有効に維持・管理されている体制のかなりの部分は営業秘密管理においても転用できるはずです。

 ですから、ISO9001の認証を受けている、あるいはこれから受けようと考えている企業では、営業秘密管理体制の構築のために必要な初期段階の作業が既にできているだけでなく、営業秘密管理を進めていくにあたっての基本的な組織体制や重要なマインドが備わっていると言えるのです。

 ISO9001の認証取得に取り組んだ経験をお持ちの企業の方は、品質の維持や向上に加えて、大事な自社技術を守るための不正競争防止法の営業秘密を意識した管理に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 もちろん、ISO9001の認証を受けていなくても、私たち知的財産戦略アドバイザーが企業の実情に合わせてゼロから丁寧にご支援させていただきます。
ぜひ営業秘密110番をご活用ください。スタッフ一同、皆さまからのご連絡をお待ちしております。

 

第12回 裁判例から学ぶこと/小原アドバイザー

企業支援の業務に就いて

私は永年、サラリーマンとして、し烈な企業間競争の中で「自社の収益に貢献する」ことを第一義に、精励恪勤、遮二無二働いてきました。

その世界から、INPIT営業秘密110番のアドバイザーに転じ、この秋で丸4年になります。

その間、人・金・モノがじゅうぶんとはいえない環境にあって、一人何役もこなすエネルギッシュで人情味あふれる社長のもと、仕事に誇りを持ち、日々たゆまぬ努力を続けている多くの中小企業の姿を目の当たりにしてきました。

優れた技術や製造ノウハウ、キラリと光る製品を有し、まさに日本経済の基盤を支えている中小企業を、微力ながら知財面からご支援するのが、私たちの仕事です。

「ささやかであっても、何か社会に貢献している」というような、前職とはまったく異次元の張り合いを感じながら、全国各地の企業訪問を続けています。

裁判例は生きた教材

退職した元従業員が会社の大事な情報を盗むケースが多いことを、みなさんも良くご存知だと思います。

企業情報の流出事件が、法廷での争い(裁判)にまで至ることがあります。
そのような事件の「裁判例」は、ネットでも公開されていて、私たちにとって、この上ない生きた教材です。

5人のアドバイザーが順番に、各自が興味を持って選んだ題材を解説する「裁判例勉強会」を月イチのペース続けています。

指南役は、私たちの窓口相談スタッフでもある元高裁判事の古城(こじょう)春実弁護士です。

不得意分野へのチャレンジ

アドバイザーは、メーカーでの永年の知財キャリアはあるものの、全員「非」法学部出身ゆえ、悲しいかな「リーガルマインド」を、まるで持ち合わせていません。

それでも、読み付けない判決文に挑みます。

しかし、裁判官が書いた、100ページにも及ばんとする難解極まりない判決文(岩波国語辞典の編者岩渕悦太郎氏は、その著書で「我が国屈指の秀才が書く、一般人には最も読み辛い文章の代表例」と紹介)のジャングルに迷い込み、その中をコンパスも持たずに、当て所なくさまよい歩くような状況に陥ってしまうことが少なくありません。

幾度も読み返し予習に励むも、消化不良のままタイムアウト。
無情にも勉強会当日がやってきます。

冒頭に、事件の概要を説明。
すかさず、先生から「ホワイトボードに、登場人物の相関図を分かりやすく書いてみて」との言葉が飛んで来ます。

当番が、スラスラと明快に解説を進められることは、滅多にありません。

初学者は、原告と被告のバトル(言い争い)の部分に引きずりこまれ、そこにフォーカスを当ててしまいがちです。

先生からは、裁判例を読み解く際は、生々しい争点に目を奪われるのではなく、まず請求原因(原告が法律のどの規定(条文)を根拠にどの様な要求をしているか)に着目し、事件全体の骨格を見定めた上で、原告・被告それぞれの主張、裁判所の判断を確認して行くステップが重要だと教わっています。

裁判例を企業支援のツールに

回を重ね、様々な裁判例に触れて行くうちに、次第にそれぞれの趣旨が読み取れるようになってきた気がします。

未だ、判決文は手強い存在ですが、ネットのダイジェストや雑誌解説記事などではなかなかイメージできない、事件現場の臨場感をも得られる大きなメリットもあります。

例えば「中小企業では企業情報の管理レベルがこの程度であっても営業秘密と認められることがあるんだな」とか、「競業避止(きょうぎょうひし)義務について裁判所は、かなり厳格なジャッジをするんだな」とか、「裁判所は、民事の名誉回復請求権を滅多に認めないんだな」などが、それぞれの事案のリアルなイメージを伴って理解できます。

苦労してチャレンジし、高名な法律家の指導を受けて読み込んだいくつもの裁判例は、企業への、実務に沿った、より具体的なアドバイスに活用できる、独学では決して得ることのできない、私たちの貴重なデータベースです。

「引き出し」を満たしておくために

この仕事をしていて、
「自分では、分かったつもり」と「それを、他者に正しく伝わるように平易に説明できること」には大きな隔たりがあるのを、日々思い知らされます。

まだ道半ばです、
これからも、ひるまずに難解な判決文への挑戦を続け、「事例の引き出し」をさらに充実させ、それらを中小企業の実務に役立ててもらえるよう、努力をいとわず研さんを積んでいきたいと思っています。

 

第11回 社内のルールブック(営業秘密管理規程)を作りましょう!/小原アドバイザー   

情報漏えいの残念なケース

 もし、会社の大事な情報を誰かに盗まれたとしたら、みなさんは、どうされますか?
・近所の交番に駆け込み、当直の巡査に通報する
・地元の警察署の防犯係の刑事さんに連絡する
・どうしたら良いか見当もつかないので、以前ご近所とのトラブルで依頼した弁護士に相談する
などでしょうか?

 不幸にも、企業情報流出事故(事件)が起きた場合には、(交番や地域の警察署ではなく)営業秘密保護対策官や専門知識を有する警察官が配置されている都道府県警察本部の生活環境課、あるいは知的財産問題に詳しい弁護士に相談してください。

 弁護士相談や(全国の警察本部を管轄する)警察庁との連携がある私たちの “営業秘密110番” には、
「退職者が、我が社の重要な『営業秘密?』を持ち出し、それを使って商売をしているようだ、売上減の実害も被っているし、どうしても犯人を許せないので告訴もしたい。具体的にどうアクションすれば良いか?」
というような相談が、ときどき飛び込んできます。

 しかし、じっくり落ち着いて詳細に事情を伺うと、盗まれた企業情報が、そもそも「営業秘密には該当しない」ことが7〜8割で、意気込んで問い合わせをしたものの、虚しく切歯扼腕するほかない、とても残念なケースが少なくありません。

会社の重要な情報を法律で守るには

 管理が不徹底な会社の情報が盗まれた場合には、単なる(一般情報の)窃盗事件の扱いとなり、差止(侵害行為をやめさせること)もできませんし、犯人の量刑もさほど重くありません。

 罰金額で比較すると、不正競争防止法の営業秘密侵害罪が「3,000万円以下」なのに対し、窃盗罪は「50万円以下」で、実に二桁もの差があるのです。

 会社の大事な情報を、民事措置の「差止請求」が可能で、さらに懲役を含む重い刑事罰も規定されている「不正競争防止法の営業秘密」として守るには、情報が秘密として管理されている(「秘密管理性」を満たす)必要があります。

 秘密管理性とは「従業員が対象の情報に接したときに、その情報を『会社が秘密として管理していること』を、従業員に客観的にわかるようにしておく」ことです。

 例えば、社長さんと専務さんだけが「とても大事な我が社の極秘ノウハウだ」と思っている情報を退職者に盗まれたときに、「その情報は、実は我が社のスゴ〜く大事な虎の子技術なのだ、盗んだお前を営業秘密侵害罪で警察に突き出してやるぞ!!」というような「後出し」の措置はできません。

 被疑者であるその退職者が、在職していたとき(=盗む前)に「秘密と認識できるようにしておく必要があります。

 一般的に行われているのは、重要書類に「マル秘」スタンプを押したり、サーバー内に保存されている発売前の新商品情報を、限られた関係者しか見ることができぬようにID・パスワードでアクセス制限をすることなどです。

規程(ルールブック)や、情報のリスト(台帳)を作りましょう

 これらのマーキング等(=秘密の明示)を行うことは、秘密を認識させるために必須ですが、加えて、不正競争防止法の秘密管理性要件を満足する体制を維持管理するための社内ルールブック(営業秘密管理規程)を制定しておくことを強くお薦めします。

 検討段階で、従業員の意見も広く取り入れながら「管理規程」を作り、朝礼・社内全体会議等でその内容(各条項の趣旨等)の周知・理解を徹底しながら、規程に則った運用をすることで、営業秘密管理が、より実効的な活動になります。

 書類への「マル秘」マーキングや、電子化データのアクセス制限の対象である「秘密として守るべき自社情報」のリスト化(台帳化)も、併せて行いましょう。

「何が会社の秘密か」を明確に文書化(台帳化)しておくことは、実務においてはモチロン、秘密管理性の観点からも重要です。

 規程や台帳は、不幸にも会社情報の流出事故が起こり、裁判や警察沙汰になった場合、「あなたの会社が、大事な情報を不正競争防止法で規定されている営業秘密としてシッカリ管理していたこと」を証明する有力かつ説得力ある証拠にもなるのです。

 情報は(たとえ有力な取引先に対しても)「見せない」「教えない」「渡さない」が原則です。

 性善説や、根拠なき楽観論で「まあ、大丈夫だろう」と高を括っていて何の手も打たずに、(他社には決して知られたくない)あなたの会社の重要な情報が、従業員や取引先、工場見学などによって容易に外部に「ダダ漏れ」になってはいないでしょうか?

 少しでも不安に思われたら、
規程や台帳を整備し、大事な企業情報を「営業秘密」として全社を挙げてシッカリと守っていきましょう。

私たちの窓口サービスをご活用ください

 各都道府県の知財総合支援窓口(ナビダイアル0570-08210)および、INPIT営業秘密110番では、営業秘密を含む知的財産に詳しいスタッフが、(推奨「ひな形」のご提供も含めた)営業秘密管理規程整備(完成まで)のフォローをいたします。

 費用は一切かからない公的なサービスです。

 他の会社規則等と比較して、営業秘密管理規程の作成は、さほど難しくありませんし、私たちは懇切丁寧な親身の指導を心がけておりますので、事前知識がまったくない場合でも、心配ご無用です。

 みなさまからの、ご連絡をお待ちしています。

 

 

[最終更新日:2020年10月30日]

[この記事に関するお問合わせ先]
知財戦略部 営業秘密管理担当
メールアドレス: trade-secret@inpit.go.jp 
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