知的財産戦略アドバイザーのコラム

 本コラムでは、営業秘密・知財戦略相談窓口の知的財産戦略アドバイザーが、日々の相談業務の中で感じたことや考えていることから、営業秘密を管理・活用する上で皆様のお役に立つようなちょっとした豆知識等を紹介しています。
※ 本コラムの内容は執筆者個人の意見を表すものであり、当館の見解を示すものではありません。
※ 仕様上、文字をかな表記にしている箇所がございますのでご了承ください。

 

番外編 営業秘密110番 事務局のコラム(1)

こんにちは、事務局です

 営業秘密110番の知的財産戦略アドバイザーがちょっと役立つ豆知識などをご紹介する本コラムですが、次回で早くも20回目を迎えます。

 今回は、番外編として、営業秘密110番の事務局より日々の業務で考えたり感じたりしていることをご紹介します。営業秘密110番を利用したことがないという方には少しでも身近に感じていただくお話を、利用したことがあるという方には少々のウラ話をお伝えできればと思います。

1500件以上の相談実績

「2018年度の相談件数が急増したけど、一体何があったの!?」

 ある日、事業紹介に伺った関係先でこんなことを聞かれました。
 直近の相談件数(営業秘密官民フォーラム(経済産業省)への報告内容)をみると、2017年度は430件、2018年度は666件と増加しています。営業秘密の漏えい事件が度々ニュースに取り上げられる昨今ですから、どうして急増したの?と心配される方がいらっしゃるのももっともです。

 営業秘密の漏えいが増えた!という訳ではありませんので、ご安心ください。

 INPITでは、全国47都道府県に設置されたINPIT知財総合支援窓口(ウェブページ)においても、2018年度から年度を通じて「営業秘密管理の周知・普及」や「社内ルールの整備支援」への対応を実施し、日本全国、より多くの会社に営業秘密管理のご支援が行き届くよう取り組んでいます。

 今では、各地域の知財総合支援窓口の活動が起点となり、それぞれの地域におけるきめ細やかな対応に力強く後押しされながら、協働作業にてご支援を進めることが多くなりました。このような背景から、営業秘密110番への相談に繋がる案件が増え、営業秘密110番を開設した2015年2月からの累計はついに1500件を超えました。

 「どんな業種・規模の会社にも秘密として管理すべき情報はある」
 「情報漏えいで被る「高い授業料」を払う前に事前策を講じて欲しい」
 「会社の実情に応じて、まずはできることから具体策をご支援したい」

 こうしたことを、アドバイザーから中小企業の事業現場を聞く中で、私たち事務局も強く感じています。そして、会社の取り組みを後押しするために必要な具体的な事例と対応策等の十分な相談経験を私たち営業秘密110番は蓄積しています。

 会社の秘密を管理することによって、取引先からの信用が向上することが期待できます。私たち事務局としては、近い将来、「秘密管理が取引環境において当たり前の前提」となることを思い描きながら、日々、一社一社、アドバイザーとともにみなさまのご相談・支援に対応して参ります。

 ぜひ営業秘密・知財戦略相談窓口(営業秘密110番)をご利用ください。

 ※ 番外編は、不定期での掲載を予定しています。

 

第19回 会社の大事な秘密を「モレなく」管理するために/北村アドバイザー

情報は本来「形のないもの」

みなさんの会社で、ライバル会社に知られては困る大事な情報にはどんなものがあるでしょうか。また、そのような情報は会社のどこにあるでしょうか。そのほとんどが営業秘密として管理すべきものです。

ですから、「会社にとって大事な情報」の洗い出しは、秘密管理の活動において最も重要な作業です。

洗い出しによって情報をリスト化できれば、何が「会社にとって大事な情報」であるかを全社員で共有し、同じ認識のもとに情報を扱うことができます。このことが、情報漏えいの防止に繋がるのです。

支援で中小企業を訪問し、営業秘密管理の取り組みに納得いただいた上で、「次回までに会社の大事な情報をリストアップしてください」とお願いすると、大抵の場合、紙ファイルや電子データを対象にしたリスト化がスタートします。

しかし、情報は本来「形のないもの」です。

上記のような紙ファイルや電子データは、「会社にとって大事な情報」が文字や図などを利用して目に見える形となった一つの姿でしかありません。それ以外で社内に存在するものも「モレなく」洗い出しておかなければ、全社員が「何が会社の秘密であるか」を認識し、そうした情報を「モレなく」管理することはできません。

実際の支援では、製造現場を一緒に歩いたり、社長や実務担当者に企業の状況を事情聴取したりしながら、「会社にとって大事な情報」とは何か、それらがどこに存在しているかを一緒に考えながら助言をしています。

製造設備や治工具、金型、試作品などの物件

製造業の会社を支援していて、洗い出し作業の際、つい見逃しがちなものとして、製造設備や治工具、金型、試作品などの物件があります。

多くのメーカーでは、独自の工夫が施された製造設備や治工具があり、また長年の工夫で最適なパラメータを見出していることがほとんどです。それらが無造作に製造現場や事務所に置かれていたりすることはないでしょうか。

また、試作品が会社の秘密であるという認識が希薄で「無防備に試作品を提示してしまったら、それをヒントに取引先が勝手に類似品を量産・販売した」、「連絡がなくなったと思ったら特許出願されていた」ということも実際に起こっています。

このような「会社にとって大事な情報」が姿・形を変えて表れている製造設備や治工具、金型、試作品などの物件についても、工場見学などの機会にライバル会社に模倣されないように会社の大事な秘密として「モレなく」管理対象とすることが必要です。こうした物件については、物件がある作業場などに「立入禁止」、「写真撮影禁止」の掲示をすることや、見学の受け入れ時に、部外者の目に入らないようにシートで覆うといった対策をとりましょう。

頭の中だけにある情報

次に、従業員の頭の中だけにある情報も「モレなく」重要です。

普段の支援業務で多くの会社を訪問していますが、技術ノウハウや製造レシピ、得意先情報などが、文書などの「形のあるもの」になっていないことが間々あります。

頭の中だけにある情報を「形のあるもの」として会社の秘密のリストに加えることができれば、「◯◯の加工方法」といったカテゴリーとしてだけでなく、会社の秘密を具体的に特定して全社員に認識させることができるようになります。そうすると、共同研究開発や退職者の対応において守秘義務の対象を明確にできますし、いざ問題発生となった際に「それが秘密とは思わなかった」という言い逃れの常套句を使わせないといった点でメリットが期待できます。

一方で、頭の中だけにある情報を「形のあるもの」とすることは手間がかかることです。訪問先でご紹介すると敬遠されることが多くあります。そのような中でも「世代交代、事業継承の準備にもなり、一石二鳥」と前向きな回答をいただくことがあります。一社一社の状況をよくお聞きして、できることから、必要な取り組みをご支援しよう、と熱意を新たにする瞬間です。

まずはできる範囲から

まずはできる範囲からで大丈夫です。会社の情報の洗い出しをはじめましょう。

INPIT営業秘密・知財戦略相談窓口では、洗い出した情報をリストとして書き出すための実務的なツールを用意しています。多くの中小企業支援の経験を踏まえ、第三者としての視点を交えて、どんな情報を洗い出したら良いか、具体的にご支援いたします。お困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

一度モレてしまった情報は決して元には戻りません。
そのようなことが無いように会社の大事な秘密を「モレなく」管理していきましょう。

 

第18回 「ワークショップ」へようこそ/小原アドバイザー

ドッキリ体験

先日、メーカーの経営幹部10数名が参加する「中小企業知財勉強会」の講師を務める機会がありました。

さほど広くない会場に赴くと、テレビ取材クルーが待ち構えています。

「えっー! 聞いてないよ! 知ってたら、一張羅のスーツでキメて来たのに」と、悔やんでも「あとの祭」。

当日夕方の情報番組と、21時前のNHKニュースで、勉強会風景、講師(筆者)および受講者のインタビューが、放映されました。

テキストの、最も重要な箇所が大写しにされ、私へのインタビューも、訴えたいポイントを逃さず的確に、プロの早技で、見事に編集されています。

そして、
「これまでは、日常の業務で、重要な企業情報や契約を、何気なく取り扱って来た。今後は、この勉強会で学んだ事柄を、肝に銘じて、注意深く仕事を進めたい。」との、参加者の端的なコメントで、締め括られていました。

話し手の「思い」が、受講者に「伝わった」ことが、テレビ画面でハッキリ認識できた、講師冥利に尽きるシーンでした。

受講者参加型セミナー

従来は、われわれ講師が、壇上から一方的に受講者に語りかける「座学スタイル」オンリーでしたが、試験的に「グループ学習形式」のセミナーを、不定期に開催しています。

前段で、営業秘密の重要事項を30分程度概説した後、数名のグループに分かれ、

まず、
・知的財産全般について、よくある誤解
・共同開発を題材にした契約の理解

に関するクイズについて、議論をします。

とらえ方によって、複数の解答がある設問ゆえ、議論百出。
グループメンバーが、ここで、お互いの「知識レベル・人となり」を知り、距離をグーンと縮める効果も狙っています。

チーム内で、自由に意見を出しやすい雰囲気が、でき上がったところで、

本題の
「実務で起きやすい、企業情報にまつわるトラブル」に関する、事例をベースにした数種類の設問に、順次取り組みます。

数人寄れば・・・

グループは、専門知識・実務経験豊富なベテランから、知財初心者の若手総務部員まで、玉石混交です。

初学者が、素朴な疑問をメンバーに投げかけ、ベテランが、それを平易に親切に解説してあげるようなシーンが、よく見られます。

以前読んだ、英文学者外山滋比古氏の著書『思考の整理学』に、「一人一人が持っているセレンディピティー(Serendipity 偶然の発見)の確率は、指数関数的に高まる。三人いると三倍でなく三乗、五人なら五乗になる」とありました。

「三人寄れば、文殊の知恵」 「個人(独力)では辿(たど)り着けない発想や考えが得られる」

ワークショップでは、まさにこの効果が、例外なくハッキリ現れます。

グループが「異業種メンバー」で構成されているときには、それが、さらに顕著です。

以前、私がメーカーのサラリーマンだったときには、社内研修等でのグループ学習の効用を、それほど感じませんでした。

「新しいアイデアは、同質な人間どうしでは、生まれにくい」のかも知れません。

異業種交流「反省会?」へ・・・

講師が思いつかなかった「秀逸な解答」が飛び出すことも、少なくありません。

それらは、次回以降の「エクセレント模範解答」として、ありがたく、いただいておきます。

座学形式のセミナーでは、終了後に、少数の質問者のみが会場に残り、それ以外の大多数の受講者は「サッサと家路につく」のが通常です。

一方、ワークショップ型では、いくつかのチームが教室に居残って、メンバーどうしの情報交換などが、終了後も、継続している光景が、よく見られます。

それが高じて「場所を変え、反省会(飲み屋での懇親会)をやろうよ! 講師も来ませんか?」と、お座敷がかかることも、少なくありません。

セミナーへの、いざない

多くのワークショップ型セミナー受講者から「講義形式と比べて、格段に理解が深まった」との感想が、寄せられています。
私たちにも「リアルタイムに、参加のみなさんの理解度が把握できる」大きなメリットが、あります。

高評を得られ、講師としても手応えを感じるので、順次このスタイルを増やしたいと、考えています。

議論に加わるのが苦手な参加者が「一人ぼっちにならぬような」配慮も、いたします。

みなさま、ぜひ奮ってご参加ください。
会場で、お待ちしています。

 

第17回 企業訪問での「困った」/小原アドバイザー

初回にかける想い

全国各地の企業を訪問し、事業の課題を仔細にインタビューし、現場を拝見し、それぞれの会社事情・規模に適した情報管理の必要性を説き、活動スタートに繋げるのが、私たちアドバイザーの主たる業務の一つです。

同僚アドバイザーが、以前の本コラムで「保険のようなもの」と表現したように、営業秘密管理は「転ばぬ先の杖」のリスク対策活動です。

いつ起きるか分からない(起きないかもしれない)「情報漏洩事件」の実例などを織り交ぜた話題を、会社運営に一家言を持つ(しかし知財には縁遠い)初対面の中小企業経営者に、投げかけます。

そして「自分たちも、取り組むべきだな」と思って貰える段階まで、短時間の滞在中に漕ぎ着けられれば「訪問目的達成」

逆に、しくじったら、そこで「ジ・エンド」、
「次」はありません。

思わぬ先制攻(口)撃

先日、家業を多角的に発展させている、若き二代目社長に、お目にかかった時のことです。

開口一番、

  • いまや、我々デジタル世代に、社会は大きく変革しつつある、先代(父親)は企業秘密漏洩に過敏であったが、それは古きアナログ時代の発想だ
  • 従業員を疑うなんて非道徳、経営者の資質を問われかねない
  • 善い社員ばかりだ
    たった一人の不心得者のために新しい規則を作って、大多数の良識ある者を縛るのは、我が経営哲学に反する
  • SNSの時代、漏れたら(情報は、世界中に瞬時に拡散し)「どうしようもない」じゃないか
  • 「営業秘密管理は、保険のようなもの」ならば、起きないかも知れない情報漏洩事故の備えに費やすエネルギーは、いま事業に直接的に役立つコトに注ぐべき
    病気になったら、そのときに全力で治療に専念すればよいのだ

と、滔々(とうとう)と持論を述べ立てられてしまいました。

「聴く」に徹する

平静を装いつつも、思わぬ初っ端からの「先制パンチ」に周章狼狽。

こちらも伝えたいコトは山ほどあるのですが、反論は封印し、まずは聴き手に徹し、発言の中からキーワードを抜き出し、相槌を打ちながらそれらを反復します。

さらに「いま仰ったコトは、こういう風にも言えますね」と、相手への理解を示した上で、社長のスタンスを確認しながら、少しずつベクトル修正を試みました。

そして「着地点」へ

変化の激しい情報化時代の経営を、真摯に考えている若手社長だからこそ「企業秘密が会社のだいじな資産である」ことは、じゅうぶんに認識されています。

次第に、社長から「我が社の、虎の子情報は…」というような話題が出はじめ、それに呼応した営業秘密視点からの私の意見にも耳を傾けて下さるようになり、

最後には
「一気にはムリかも知れないが、当社でも、できるところから着手すべきだね」とのコメントを貰えるに至りました。

「未明に家を出、資料がギッシリ詰まったカバンを抱え、数時間かけて訪ねた甲斐があった 」と、思う瞬間です。

「転ばぬ先の杖が、いつかどこかで役に立つ」
その信念で、東奔西走の日々を過ごしています。

 

第16回 キックオフミーティングのすすめ~営業秘密として情報を管理する上で重要なこと~/小高アドバイザー

1.情報管理を始める際に

 昨年7月に知財戦略アドバイザーに就任して1年半が経ちました。これまでの間、多くの中小企業を訪問し、会社の大事な情報を営業秘密として管理する重要性を多くの経営者や従業員を相手に説明してきました。そして、私の話に納得をいただいてご支援をした結果、社内の情報管理体制が整い、社内情報を営業秘密として管理し始めた企業が多々あります。
 それでは、社内の情報管理体制を整備した上で、営業秘密として情報管理を始める際に重要となることとは何でしょうか。

2.営業秘密としての情報管理

 「営業秘密」というのは不正競争防止法に定義のある法律用語です。万一大事な情報が流出した場合に裁判で「営業秘密」と認められれば、民事的/刑事的に保護を受ける道が拓けるのですが、そのためには、3つの要件をすべて満たす必要があります。その中でも、特に大事なのが「秘密管理性」というものです。この要件の判断には、対象となる情報が従業員から見て秘密として管理されていたと認識できたのかどうかが重要なポイントとなります。
 営業秘密として情報の管理を行うには、一般的には社内情報の洗い出し(リストアップ)を行い、秘密のレベル(極秘、社外秘、一般情報等)を区分けする必要があります。そして、それらの秘密情報を対象とした取り扱いルールを「情報管理規程」として定めて、その内容を全ての従業員に周知徹底していきます。

3.規程は作成したものの・・・

 私がはじめて支援に伺った企業の中には、社長や経営幹部の方だけで情報管理規程を作成し、これで良し、としていたケースがありました。みなさんはこれで営業秘密の管理として十分だと思いますか?
 この段階では、作成した規程は従業員に浸透していないですし、秘密して管理すべき社内情報、すなわち営業秘密が何なのかが従業員には認識されていません。営業秘密としての管理はこれでは不十分です。裁判になれば、不十分な管理状況を理由にして「それが秘密とは思わなかった」と言い逃れをされてしまいます。
 秘密情報を取り扱うルールとして作成する情報管理規程ですが、多くは社内規則の一つとして整備されます。社内規則ですから、単に規程を作成するだけではなく、従業員の皆様に説明しその内容が全員に共有されていることが重要なのです。

4.キックオフミーティング

 私ども知財戦略アドバイザーは作成した情報管理規程を従業員の皆様に十分ご理解いただくことが、営業秘密としての情報管理を始める上で必須と考えており、支援を行った企業の皆様には、「キックオフミーティング」の開催を提案しております。
 このミーティングでは、従業員の皆様に営業秘密として情報を管理することの大切さについて簡単なセミナーを行い、さらに作成した情報管理規程について解説を行います。そして、社長を始め、社内全員で意識を共有した上で、情報管理を行っていくことを勧めています。
 皆様の企業でも、営業秘密として情報管理を行う際にどのようにすすめたらよいか、私どもにご相談いただければ、全国47都道府県に設置したINPIT知財総合支援窓口とも連携して貴社に応じた進め方で支援させていただきます。

 

第15回 身の丈に合った営業秘密管理って・・・/飯塚アドバイザー

身の丈に合った営業秘密管理とは

 企業訪問の際、つい意気込んで 新聞沙汰になった「大企業の情報漏洩事件」を紹介したり、「営業秘密の三要件とは・・・」などと説明を始めてしまいがちです。
  そんなとき聞いていただいた方から、「この会社規模で無理なく運用できる 身の丈にあった営業秘密管理方法を提案してほしい。」とリクエストされます。

 企業秘密を法律(不正競争防止法)で保護するには、従業員がその秘密書類に接したときに、「この書類は会社が秘密として管理しているもの」と認識できること(これを「秘密管理性」といいます)が必要です。

 営業秘密管理措置としては、以下の処置が広く知られています
 ・秘密とする文書に「マル秘」や「Confidential」の透かし印刷やスタンプを押す
 ・秘密管理されている電子データホルダーにはID・パスワードでアクセス制限をかける
 これに加えて、上記「マル秘」等の書類が会社内にあること。そして、その「マル秘」等書類は一般情報・電子データとは分離されて管理されていることを、従業員誰もが認識し管理に協力できればよいのです。

中小企業での営業秘密管理とは

 営業秘密管理は、どこまでやれば安心かなど、完璧を目指せばキリがありません。
 平成27日1月28日に全部改訂された「営業秘密管理指針」(※)の留意事項に「営業秘密が競争力の源泉となる企業、特に中小企業が増加しているが、これらの企業に対して「鉄壁の」営業秘密管理を求めることは現実的ではない。」と記されています。
 大企業でもなかなか実施が困難な「鉄壁の」秘密管理は、中小企業にとっては過剰品質と言えるものです。
 上記の「営業秘密管理指針」では、「これなら、自社でも実施できそう」と思える管理内容を説明しています。20ページ弱の薄い冊子です。是非ご一読ください。

(※)「営業秘密管理指針」/経済産業省HP http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/20150128hontai.pdf

営業秘密管理の原点

 「営業秘密管理」の必要最低限のあるべき姿は、「マル秘表示された書類が、他の一般情報とは分離されて保管されている。そして、会社のだいじな情報が秘密情報として管理され、特定の従業員しかアクセスできないことを社長から新入社員・パート・アルバイトに至るまで全員に認識されている状態」が維持できていることです。

 子供のころによく親から言われた懐かしい言葉、「自分だけの大事なものは、ちゃんとしまっておくこと」、「大事なものが机の上に出しっぱなしだよ」と私は親から注意されたことを思い出します。
 会社の営業秘密情報は、「情報の管理と有効利用のバランスを考慮」することが重要で、この側面では少々利用場面に差異がありますが、整理整頓は営業秘密管理の原点です。

 これを「営業秘密管理」の第一歩として、その後の「マル秘」情報の種類・量の多寡や社内周知規模の変化に応じて管理対象や管理方法が変遷していくものと考えてはいかがでしょうか。

 情報も会社の大事な資産です。この大切な財産を営業秘密として守ることも会社の責務といっても過言ではありません。
 どんな些細なことでも、知財総合支援窓口(各都道府県にあり:ナビダイヤル0570-082100)あるいはINPIT営業秘密・知財戦略相談窓口(03-3581-1101)にお問い合わせください。

 皆様からの ご連絡をお待ちしております。

 

第14回 営業秘密を管理して売り上げを伸ばす!/北村アドバイザー

営業秘密を管理して売り上げを伸ばす!

確実に売り上げを伸ばしたいのであれば、営業秘密の管理をきちんとするのがおすすめです。

営業秘密は、ノウハウや顧客リストなど、誰にも知られたくない、中小企業の事業にとって強みとなる情報です。

その情報をきちんと管理すると、…
中小企業に従事する方にありがちなセールストークや退職者によって、営業秘密が漏れてしまった。
                …なんてこともなくなります。

その情報をきちんと管理しなければ、…
ノウハウなどが漏れてしまい、多くの人が知ってしまうこととなります。
情報としての価値は失われてしまい、その回復は非常に困難なものとなります。
                …ライバル企業の追随を受けて、売り上げは伸びません。

また、ノウハウなどを漏らした中小企業自体もお客さまや取引先などから「秘密情報も管理できない企業」として信用をなくしてしまいます。
最悪、事業の継続ができなくなる可能性もあります。

このようなことが起きないようにしたいですね。

営業秘密は、中小企業にとって競争力の源泉であります。特許権だけが競争力の源泉ではありません。
特許権は、出願から20年でその権利は消滅し、その後は、ライバル企業も自由に使うことができるようになります。
一方、ノウハウなどの営業秘密は、きちんと管理しておけば、20年後においてもずっと独占して実施することができる可能性があります。その結果、その営業秘密を使った商品・サービスの売り上げを伸ばすことができます。
競争力を高めて、確実に売り上げを伸ばすためにも、営業秘密の管理をおすすめします。

中小企業を訪問して感じることですが、社長自らが事業に関するアイデアやコストなどについて、熱意をもって説明してくださることがあります。支援においてお話いただけるのは大変ありがたいですが、営業先でも同様に話されているのではないかと心配します。

営業秘密管理のはじめの一歩として、何が営業秘密かを、社長を含めた社内全体で理解することから始めてはどうでしょうか。社長をはじめ、みなさんの言動が変わってくると思います。

INPIT営業秘密・知財戦略相談窓口では、電話、窓口(対面)での相談対応や、営業秘密管理の重要性を理解してもらうために中小企業を訪問して営業秘密に関する社内セミナーなども実施しています。ぜひご活用ください。

その他、営業秘密管理の体制整備に役立つサンプル規程や契約書のひな形なども用意しています。全国47都道府県に設置されたINPIT知財総合支援窓口とも連携していますので、INPIT知財総合支援窓口、もしくは、営業秘密・知財戦略相談窓口にお気軽にご相談ください。

 

第13回 営業秘密管理とISO9001/古田アドバイザー

営業秘密管理においても通じること

 私が食品機械を製造する中小企業の管理職からINPITの知的財産戦略アドバイザーに転じて約三年半が経ちました。全国各地の中小企業を個別訪問し、営業秘密管理体制構築のお手伝いをするのが現在の私の主要な業務です。
そうした中で、支援を開始した直後、企業の根幹をなす設計・製造情報に関し「何が会社の秘密か」を特定する作業(=技術情報の棚卸し)が難航して暗礁に乗り上げてしまうケースが少なからずあります。
一方で、技術情報の棚卸しが短時間で完了し、次のステップへとスムーズに移行できている企業もあります。そして、後者のグループでは「ISO9001を認証取得している企業が多いこと」が特徴としてあげられます。

 ISO9001は品質マネジメントシステムに関する国際規格です。メーカーでは製品の品質を維持・向上させるためのマネジメントシステムとして認証を受けているケースが大半です。

 ISO9001では、文書化した情報の管理(JIS Q 9001:2015 箇条7.5.3 文書化した情報の管理)が必須となります。
製品や部品の図面、手順書、設計検証ルール、従業員の教育訓練記録など企業におけるあらゆる設計・製造・品質に関する情報の分類・整理を行い、文書化しなければなりません。
そのため、ISO9001の認証を受けている企業は、社内の重要な技術情報のほとんどが明確に抽出・分類・整理されています。実際、私が認証を受けている中小企業を支援した際、「どんな情報がありますか?」とお聞きしますと、ISO9001の管理対象となる文書の一覧表を最初に提示されることがあります。
この中から競合他社に知られては困る情報、すなわち秘密として守るべき情報を選び出していけば、自社の設計・製造に関する営業秘密を決定すること(=営業秘密管理のための台帳作成)が大変スムーズに行えます。

 また、ISO9001は経営トップを頂点とした組織で運用する「トップダウンが基本」のマネジメントシステムです。
営業秘密管理の推進においても同様に「トップの強い意志」が必須となりますので、このことも両者において極めて重要な共通項といえます。
そして、ISO9001の品質目標を達成し、品質マネジメントシステムが有効に維持・管理されている体制のかなりの部分は営業秘密管理においても転用できるはずです。

 ですから、ISO9001の認証を受けている、あるいはこれから受けようと考えている企業では、営業秘密管理体制の構築のために必要な初期段階の作業が既にできているだけでなく、営業秘密管理を進めていくにあたっての基本的な組織体制や重要なマインドが備わっていると言えるのです。

 ISO9001の認証取得に取り組んだ経験をお持ちの企業の方は、品質の維持や向上に加えて、大事な自社技術を守るための不正競争防止法の営業秘密を意識した管理に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 もちろん、ISO9001の認証を受けていなくても、私たち知的財産戦略アドバイザーが企業の実情に合わせてゼロから丁寧にご支援させていただきます。
ぜひ営業秘密110番をご活用ください。スタッフ一同、皆さまからのご連絡をお待ちしております。

 

第12回 裁判例から学ぶこと/小原アドバイザー

企業支援の業務に就いて

私は永年、サラリーマンとして、し烈な企業間競争の中で「自社の収益に貢献する」ことを第一義に、精励恪勤、遮二無二働いてきました。

その世界から、INPIT営業秘密110番のアドバイザーに転じ、この秋で丸4年になります。

その間、人・金・モノがじゅうぶんとはいえない環境にあって、一人何役もこなすエネルギッシュで人情味あふれる社長のもと、仕事に誇りを持ち、日々たゆまぬ努力を続けている多くの中小企業の姿を目の当たりにしてきました。

優れた技術や製造ノウハウ、キラリと光る製品を有し、まさに日本経済の基盤を支えている中小企業を、微力ながら知財面からご支援するのが、私たちの仕事です。

「ささやかであっても、何か社会に貢献している」というような、前職とはまったく異次元の張り合いを感じながら、全国各地の企業訪問を続けています。

裁判例は生きた教材

退職した元従業員が会社の大事な情報を盗むケースが多いことを、みなさんも良くご存知だと思います。

企業情報の流出事件が、法廷での争い(裁判)にまで至ることがあります。
そのような事件の「裁判例」は、ネットでも公開されていて、私たちにとって、この上ない生きた教材です。

5人のアドバイザーが順番に、各自が興味を持って選んだ題材を解説する「裁判例勉強会」を月イチのペース続けています。

指南役は、私たちの窓口相談スタッフでもある元高裁判事の古城(こじょう)春実弁護士です。

不得意分野へのチャレンジ

アドバイザーは、メーカーでの永年の知財キャリアはあるものの、全員「非」法学部出身ゆえ、悲しいかな「リーガルマインド」を、まるで持ち合わせていません。

それでも、読み付けない判決文に挑みます。

しかし、裁判官が書いた、100ページにも及ばんとする難解極まりない判決文(岩波国語辞典の編者岩渕悦太郎氏は、その著書で「我が国屈指の秀才が書く、一般人には最も読み辛い文章の代表例」と紹介)のジャングルに迷い込み、その中をコンパスも持たずに、当て所なくさまよい歩くような状況に陥ってしまうことが少なくありません。

幾度も読み返し予習に励むも、消化不良のままタイムアウト。
無情にも勉強会当日がやってきます。

冒頭に、事件の概要を説明。
すかさず、先生から「ホワイトボードに、登場人物の相関図を分かりやすく書いてみて」との言葉が飛んで来ます。

当番が、スラスラと明快に解説を進められることは、滅多にありません。

初学者は、原告と被告のバトル(言い争い)の部分に引きずりこまれ、そこにフォーカスを当ててしまいがちです。

先生からは、裁判例を読み解く際は、生々しい争点に目を奪われるのではなく、まず請求原因(原告が法律のどの規定(条文)を根拠にどの様な要求をしているか)に着目し、事件全体の骨格を見定めた上で、原告・被告それぞれの主張、裁判所の判断を確認して行くステップが重要だと教わっています。

裁判例を企業支援のツールに

回を重ね、様々な裁判例に触れて行くうちに、次第にそれぞれの趣旨が読み取れるようになってきた気がします。

未だ、判決文は手強い存在ですが、ネットのダイジェストや雑誌解説記事などではなかなかイメージできない、事件現場の臨場感をも得られる大きなメリットもあります。

例えば「中小企業では企業情報の管理レベルがこの程度であっても営業秘密と認められることがあるんだな」とか、「競業避止(きょうぎょうひし)義務について裁判所は、かなり厳格なジャッジをするんだな」とか、「裁判所は、民事の名誉回復請求権を滅多に認めないんだな」などが、それぞれの事案のリアルなイメージを伴って理解できます。

苦労してチャレンジし、高名な法律家の指導を受けて読み込んだいくつもの裁判例は、企業への、実務に沿った、より具体的なアドバイスに活用できる、独学では決して得ることのできない、私たちの貴重なデータベースです。

「引き出し」を満たしておくために

この仕事をしていて、
「自分では、分かったつもり」と「それを、他者に正しく伝わるように平易に説明できること」には大きな隔たりがあるのを、日々思い知らされます。

まだ道半ばです、
これからも、ひるまずに難解な判決文への挑戦を続け、「事例の引き出し」をさらに充実させ、それらを中小企業の実務に役立ててもらえるよう、努力をいとわず研さんを積んでいきたいと思っています。

 

第11回 社内のルールブック(営業秘密管理規程)を作りましょう!/小原アドバイザー   

情報漏えいの残念なケース

 もし、会社の大事な情報を誰かに盗まれたとしたら、みなさんは、どうされますか?
・近所の交番に駆け込み、当直の巡査に通報する
・地元の警察署の防犯係の刑事さんに連絡する
・どうしたら良いか見当もつかないので、以前ご近所とのトラブルで依頼した弁護士に相談する
などでしょうか?

 不幸にも、企業情報流出事故(事件)が起きた場合には、(交番や地域の警察署ではなく)営業秘密保護対策官や専門知識を有する警察官が配置されている都道府県警察本部の生活環境課、あるいは知的財産問題に詳しい弁護士に相談してください。

 弁護士相談や(全国の警察本部を管轄する)警察庁との連携がある私たちの “営業秘密110番” には、
「退職者が、我が社の重要な『営業秘密?』を持ち出し、それを使って商売をしているようだ、売上減の実害も被っているし、どうしても犯人を許せないので告訴もしたい。具体的にどうアクションすれば良いか?」
というような相談が、ときどき飛び込んできます。

 しかし、じっくり落ち着いて詳細に事情を伺うと、盗まれた企業情報が、そもそも「営業秘密には該当しない」ことが7〜8割で、意気込んで問い合わせをしたものの、虚しく切歯扼腕するほかない、とても残念なケースが少なくありません。

会社の重要な情報を法律で守るには

 管理が不徹底な会社の情報が盗まれた場合には、単なる(一般情報の)窃盗事件の扱いとなり、差止(侵害行為をやめさせること)もできませんし、犯人の量刑もさほど重くありません。

 罰金額で比較すると、不正競争防止法の営業秘密侵害罪が「3,000万円以下」なのに対し、窃盗罪は「50万円以下」で、実に二桁もの差があるのです。

 会社の大事な情報を、民事措置の「差止請求」が可能で、さらに懲役を含む重い刑事罰も規定されている「不正競争防止法の営業秘密」として守るには、情報が秘密として管理されている(「秘密管理性」を満たす)必要があります。

 秘密管理性とは「従業員が対象の情報に接したときに、その情報を『会社が秘密として管理していること』を、従業員に客観的にわかるようにしておく」ことです。

 例えば、社長さんと専務さんだけが「とても大事な我が社の極秘ノウハウだ」と思っている情報を退職者に盗まれたときに、「その情報は、実は我が社のスゴ〜く大事な虎の子技術なのだ、盗んだお前を営業秘密侵害罪で警察に突き出してやるぞ!!」というような「後出し」の措置はできません。

 被疑者であるその退職者が、在職していたとき(=盗む前)に「秘密と認識できるようにしておく必要があります。

 一般的に行われているのは、重要書類に「マル秘」スタンプを押したり、サーバー内に保存されている発売前の新商品情報を、限られた関係者しか見ることができぬようにID・パスワードでアクセス制限をすることなどです。

規程(ルールブック)や、情報のリスト(台帳)を作りましょう

 これらのマーキング等(=秘密の明示)を行うことは、秘密を認識させるために必須ですが、加えて、不正競争防止法の秘密管理性要件を満足する体制を維持管理するための社内ルールブック(営業秘密管理規程)を制定しておくことを強くお薦めします。

 検討段階で、従業員の意見も広く取り入れながら「管理規程」を作り、朝礼・社内全体会議等でその内容(各条項の趣旨等)の周知・理解を徹底しながら、規程に則った運用をすることで、営業秘密管理が、より実効的な活動になります。

 書類への「マル秘」マーキングや、電子化データのアクセス制限の対象である「秘密として守るべき自社情報」のリスト化(台帳化)も、併せて行いましょう。

「何が会社の秘密か」を明確に文書化(台帳化)しておくことは、実務においてはモチロン、秘密管理性の観点からも重要です。

 規程や台帳は、不幸にも会社情報の流出事故が起こり、裁判や警察沙汰になった場合、「あなたの会社が、大事な情報を不正競争防止法で規定されている営業秘密としてシッカリ管理していたこと」を証明する有力かつ説得力ある証拠にもなるのです。

 情報は(たとえ有力な取引先に対しても)「見せない」「教えない」「渡さない」が原則です。

 性善説や、根拠なき楽観論で「まあ、大丈夫だろう」と高を括っていて何の手も打たずに、(他社には決して知られたくない)あなたの会社の重要な情報が、従業員や取引先、工場見学などによって容易に外部に「ダダ漏れ」になってはいないでしょうか?

 少しでも不安に思われたら、
規程や台帳を整備し、大事な企業情報を「営業秘密」として全社を挙げてシッカリと守っていきましょう。

私たちの窓口サービスをご活用ください

 各都道府県の知財総合支援窓口(ナビダイアル0570-08210)および、INPIT営業秘密110番では、営業秘密を含む知的財産に詳しいスタッフが、(推奨「ひな形」のご提供も含めた)営業秘密管理規程整備(完成まで)のフォローをいたします。

 費用は一切かからない公的なサービスです。

 他の会社規則等と比較して、営業秘密管理規程の作成は、さほど難しくありませんし、私たちは懇切丁寧な親身の指導を心がけておりますので、事前知識がまったくない場合でも、心配ご無用です。

 みなさまからの、ご連絡をお待ちしています。

 

第10回 経営者の熱意が重要です/小高アドバイザー   

営業秘密管理に取り組むにあたって
 

 工業所有権情報・研修館(INPIT)の営業秘密・知財戦略相談窓口(通称:営業秘密110番)の知的財産戦略アドバイザーとなって約半年が経ちました。まだまだ先輩アドバイザーに比べて数少ない経験ですが、中小企業さまを訪問させていただいて感じたことを述べさせていただきます。

  私ども営業秘密110番の業務は、企業の皆様からの権利化/秘匿化の戦略相談、営業秘密管理相談、情報セキュリティ対策、営業秘密の漏えいなどの被害相談、一般的な法律相談などです。このうち企業さまを訪問する際の業務の大半は営業秘密管理相談です。各都道府県の知財総合支援窓口担当の皆さまが、地元の企業さまを訪問支援し営業秘密管理について問い合わせていただいた結果だと思います。私が中小企業さまに営業秘密管理の相談として訪問するときに一番気になるのは、経営者さまが営業秘密管理に関してどのくらい熱意があるかです。

  と申しますのは、営業秘密をちゃんと管理するか否かは保険のようなもので、トラブルがあったときに役立つものです。また、秘密情報をちゃんと管理する、すなわち特許で事業を守るように重要な技術情報をしっかり管理することで、事業を守ることはもちろん新たな特許出願の可能性も確保できます。さらに、こうした管理活動を通じて、自社の技術開発、知財戦略、事業戦略を推進し、社員の意識を高め技術開発企業の地位を確固たるものにできるというメリットもあります。 しかしながらそのメリットは、ISO9000や14000のように第三者認証を取得して会社の広告や名刺で宣伝できるというものではなく、目に見えづらく評価がわかりにくいものです。実際の管理には、営業秘密の抽出や分類、体制の構築という手間がかかるという点では、ISO9000の認証などと同等です。

 したがって経営者さまの最後までやり遂げるという熱意が大事なのです。経営者の皆さまが強いリーダーシップのもとで営業秘密管理に向けた取り組みをフォローしていただきますと営業秘密管理へのスタートは切りやすいものになると確信しております。
経営者の皆さま、是非とも営業秘密の管理に強い熱意をお持ちになってください。そのうえで営業秘密管理体制の構築に向けては、私ども知財戦略アドバイザーと地元の知財総合支援窓口担当の皆さまが連携して支援していきます。

 

第9回 事前のリサーチとヒアリングを大切にしています/境野アドバイザー   

企業に寄り添った支援を行うために
 

 今でも初めて訪問する企業に対しては、どんな企業なのか、どのような方が対応してくれるのかなど、緊張しながら対応しています。少しでも緊張を和らげるため、事前にできる限りの準備をするようにしています。たとえば、事前に訪問企業のホームページにより事業内容を把握したり、特許出願状況を調査したり、営業秘密管理の現状を把握するためのチェックシートを事前に送付し、その確認結果での課題把握などを行うようにしています。

  さらに訪問した際には、上記チェックシートなどの再確認と共に、競業企業との関係や業界でのポジショニングなども把握し、強みや課題を一緒に考えるようにしています。その上で、何を権利化し、何を秘匿化するか、秘匿化するもの(訪問企業が気付いている点や気付いていない点)の把握と現状の管理状況などにつき、事前リサーチに基づき、ヒアリングや質問を行い、どこに強みや秘密にすべきものがあるかを聞き出すようにしています。競業企業との関係やポジショニングなどを把握しておかないと特許を積極的に出すべきか、ノウハウ秘匿が大事なのかなど、知財戦略的な方針を誤る場合もあり、異なる方針を示してしまう場合があるからです。

 ときにはこちらから、専門家顔で強みや秘密を言い当てたくなる場合もありますが、あえて企業側から言ってもらうようにしています。こちらから指摘されるのを嫌がる場合や秘密を言いたくない場合もあるためです。この他にも、主体的に動いてもらうことで、会社内の情報資産を棚卸して自社の強みを認識したり、その強みの管理状況を把握したり、部署間の取扱いや社員間の意識の違いを認識したり、取引先との契約や情報の取扱いの状況を認識したりするなど、自ら社内の状況を再確認していただくことができるメリットもあります。

 ヒアリングでうまく強みや秘密にすべきものを引き出せたら(或いは推測できたら)、強みや秘密のレベルを見極めるよう助言しています。その上で、その強み等を基に知財戦略の方向性を共有できると、企業は動いてくれる場合が多いと感じています。特に、企業側がどこに強みや秘匿化すべきものがあるかを自ら気付いた場合には積極的に活動していただけています。

 そのためには、企業トップの認識とバックアップに基づき主体的に活動する担当者(兼務者でもよいが、好ましくは各部門の代表メンバによるグループ体制)がいることが大事と考えています。そしてそのようなメンバと意見交換し、一緒になって秘密にすべきものの抽出やルール作りなどの活動ができると知財戦略や秘密管理体制の構築が上手くいくと思っています。実際、そのようなメンバが中心になって規程類を整備し、それに基づき社内教育資料を作成したり、具体的な自社の過去の事例などを紹介したり、社内セミナー等による周知活動を行って企業全体の意識を高めた事案をいくつも目にしてきました。

 

第8回 どんな企業でも基本や課題は同じ/境野アドバイザー   

実情にあわせた営業秘密管理を
 

 私は、一昨年の初めに、総合電機メーカから転身しました。当初は様々な業種で営業秘密に関心のなかった企業への支援に戸惑いもありました。

 営業秘密とは何? 秘密の特定はどうするの? 社内ルールをどうやって策定したらいいの? などの質問に対し、自分では親切心やサービス面から好ましいと思い、杓子定規的に法律的な話、或いは様々な対応策やベストモードなどを話してしまうおそれがありました。それによって相談者側は拒否反応や消化不良を起こしてしまい、次のステップに行かないようなこともあったかと思うこともありました。

 そのような反省から、面談前や訪問の前には、できるだけ、その企業の実情や課題を理解し、それに合った課題解決・ソリューションを提供するように心掛けています。まずは相談企業の実情に即した優先順位等を示したりして、できるところから進めるように助言しています。

 私の前職での企業も今では管理がしっかりしていると思われていますが、考えてみれば、かつては営業秘密管理が不十分な状況であったと思っています。社員や取引先との数々のトラブルや課題を経験し、それらの原因を分析したり、究明したりして、反省・改善しルール等を積み上げてきたと思っています。例えば、社員等のミス(PC等の置き忘れ、USBメモリの紛失など)から共同開発先とのトラブル、サイバー攻撃、産業スパイ事件など様々です。
 それらへの対応毎にマニュアルを作り、規則を改定していたように思います。挙げ句の果て、マニュアル等が山のようになってしまうこともあります。それらを見易く表にしたり、フローチャートにしたりすることもありました。

 これらの前職でのトラブル等への対応などで、どのようなケースでどのような対応が可能かなどの検討を行ってきたことで、引き出しの量が増えてきたことが、多少なりとも今の窓口での相談対応に活きてきているような気がします。
 このような前職での経験と一昨年からの営業秘密相談窓口での種々の企業訪問・面談等での経験を活かし、それぞれの企業の事情に合わせて最初から負担の少ないやり方を提示・助言するように心掛けています。

 例えば、管理と言うと、それを守るためにどうしても業務効率が落ちる場合があるかと思っています。私もかつてはITやICT系のスピードの速い分野を担当していたこともあり、業務を優先する気持ちは良く分かります。そのような場合も業務に支障をきたさないようにルールを策定したり、やり方を工夫したりしました。そのようなやり方や考え方なども必要に応じ伝えたりすることで、それが共感を生む場合もあります。やはり企業毎の個々の事情をよく理解し、それに適したアドバイスが有効になると感じています。

 これからも企業の立場に立って支援をしたいと思っています。

 

第7回 秘密管理導入支援の中での気付き/古田アドバイザー   

企業を訪問してみて

 私たちINPIT知的財産戦略アドバイザーの最大のミッションは、知財スタッフが十分でない企業の営業秘密に関するご支援です。 支援をする中で、企業の取り組みにいくつかの傾向があることに気付きましたので、それをお伝えします。

 多くの企業で、営業秘密管理の第一歩として自社情報の棚卸しをお願いしています。 棚卸しが完了した後であれば、一般情報と営業秘密を合理的に分類することは割とスムーズに進むのではないでしょうか。


 けれども、次のステップとして、分類された情報をその重要度に応じてレベル分けをしようとしますと意外に滞る場合があります。

 原因は各部門毎に重要度の捉え方が異なるためで、部門間でのバランスが取れなくなってしまう場合が多くみられます。その場合には「絶対に教えたくないもの/重要だけど秘密保持契約書を交わした後に社外に出して良いもの」の視点からレベル分けを行ってみてください。
 そうしますと、案外イメージが湧いて先に進むことができます。 けれども、レベル分けが上手く進まない企業には、レベル分けを度外視して「営業秘密として取り扱うもの」のみにしています。

 このようにすることで営業秘密をどう取扱うかが分かりやすくなります。

 もう一つ、営業秘密管理を進めるにあたり見落とされがちな情報があります。
 取引先など、外部から預かった情報です。
 万が一、その預かった情報の管理が不十分で自社から漏えいしてしまうと、その会社の社会的信用が失墜してしまいます。そして、自社の情報と他社から預かった情報の管理を疎かにしてゴチャ混ぜにしてしまうと、例えば、その情報を使用して成果物を産出した際に、どちらの情報に基づいて産出されたか判断がしにくい状況となり、成果の持ち分で問題に発展する場合があります。

 したがいまして、自社の情報と他社から預かった情報をシッカリ別管理しておく必要がありますので、忘れないようにお願いします。 自社の実情に合った営業秘密管理の体制を整え、営業秘密の管理をシッカリしていきましょう。

 

第6回 同じ目線で/古田アドバイザー

営業秘密・知財戦略相談窓口の活動で感じたところ

 

 工業所有権情報・研修館(INPIT)の営業秘密・知財戦略相談窓口(通称:営業秘密110番)の知的財産戦略アドバイザー3名体制のうちの一人です。

 私は約二年半前に、中小機械メーカーから現職に移りました。
移った理由ですか? 
募集要項に「この窓口のサービスが、中小企業を対象に・・・」とありましたので、いままで長年自分も中小企業に身をおき、関係した中小の協力会社様にたいへんお世話になりましたことから、中小企業の皆様に、少しでも何かお手伝い(恩返し)が出来るのではないかとの一念で応募しました。

 私が当窓口の企業訪問支援を続ける中で、心がけていることが有ります。
それは訪問する企業様と同じ目線に立つことです。
けれども、訪問する企業様の特に技術面での同じ目線(理解)までに時間を要する場合があります。
その場合、教えて頂きながらの対応をさせて頂いております。
これからも同じような場合には、よろしくお願いいたします。

 企業様に訪問して、社長様に「御社の営業秘密とは」と尋ねますと、「昔からのこと(技術)を利用してやっているだけなので、ありません」と回答されることがあります。
本当に「営業秘密」はないのでしょうか? 
営業秘密とは、不正競争防止法第2条第6項の条文のとおり、「~秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって~」(一部抜粋)とあります。
例えば、通常商売を続けている限り、顧客先や仕入れ先の情報などは大事な営業秘密に成り得ます(これが盗まれたりしたら、一大事です)。
さらに、先ほどの「昔からのこと(技術)を利用しているだけ」についても、知らぬ間に技術の改良や改善をしていることがあります。
このような改善や改良を権利化して、または営業秘密として守っていくことは当然のことです。

 皆さんも今一度、自社の状況を見渡し見直し、「営業秘密」に気付いてください。

 

第5回 営業秘密管理「最初の一歩」/小原アドバイザー

難しく考えずに

 私たちアドバイザーの、もっとも本来的な活動に、企業様訪問支援があります。

 たいていの場合、初回の訪問で経営幹部に「事業活動において、営業秘密管理がとても大事ですよ」という説明(説得)をします。そして、「じゃぁ、やってみようか」ということになり、営業秘密管理体制構築の実務がスタートします。書類・図面や電子データの「マル秘表示」をすでに実施しているような企業は素地があるので、その体制をメンテナンスし、拡充して行けば良いのですが、なにもやってない会社の「最初の一歩」は、「自社の強みの源泉となっている企業情報の抽出(棚卸し)」です。

 この「出だしの作業」が、スイスイ進む企業、考え込んで難航してしまう企業、まさに両極端です。

後者の多くは、「部門間で秘密ランクに齟齬(不整合)が生じないようにするには?」「社外秘と部外秘の線引きはどこに設定すべきか?」など、分類について「難しく考え過ぎてしまっている」場合が多いように思います。

ランク分けで悩んでおられる場合には、

「まず、『営業秘密』『一般情報』『他社からもらった情報』の大きな三分類でスタートしてみましょう」

なにが営業秘密にあたるのか、見当がつかない場合には、

「100円ショップでマル秘スタンプを何個か買って来て、まずは、とにかく秘密にしたい社内文書・図面に、ポンポン押してみてください」

と、お話ししています。

 そうお伝えすると、随分と気持ちが楽になるのか、膠着状態が解消され、各社それぞれにユニークな工夫を盛り込みながら作業が前進する場合がほとんどです。高度な技術ノウハウや、超重要な営業データについては「守らねば」 という強い意識が自然に働きます。

 ですから、秘密情報の抽出作業においては、「自社内では、全員が当たり前・ふつうだと思っているけれど、実は他社から見ると喉から手が出るほど欲しい情報」を見出すコトがとても大事です。その様な情報は、あらゆる局面で、あらゆる立場の社員が、無意識のうちに簡単に社外に流出させてしまうリスクが大きいからです。「最初の一歩」の実務を通じて、会社の強みを再認識できたり、権利で守るべき大事な技術が見つかったりする副次効果が得られることも少なくありません。

メーカーであっても、サービス業であっても、営業秘密となるべき情報を持たない会社はありません。難しく考えずに、まず「だいじな情報の棚卸し」から始め、どうすれば良いか?迷われたら "営業秘密110番" に、ご相談ください。

 

第4回 講師の心得/小原アドバイザー

伝わる講演をめざして 「つかみ」と「時間管理」

 私たちアドバイザーの重要な業務の一つに、全国各地での講演があります。企業の社内研修からINPIT主催セミナーまで、参加者は数人~数百人と規模も様々です。
 現在、毎夕(事務方を含めた)窓口メンバー全員が集まって、侃侃諤諤の議論をしながら、新年度用テキストの改訂作業を進めています。場数を踏んでは来たものの、どんな講演でも毎回緊張の連続です。
 私はお話をする際に、以下のことを心がけています。

<その1> 「出だし」が勝負
必ず冒頭に、開催地、参加企業などに相応しい「つかみの話題」を用意します。

 「どんな奴が、どんな話をするんだろう」と、会場に来られた皆さんの目と耳が私の一挙手一投足に集中する時ですから、開始早々「私は、前職で重要な知財ミッションを幅広く担当して来ました」などと大風呂敷を広げたりしたら即アウト、むしろ失敗談などの方が、参加者の心をグッと惹きつけられるように感じます。

 とは言っても「スベって空振り」も少なからずあり、エスプリの効いたストライクゾーンの題材を求め、様々な資料を渉猟しています。
<その2> 時間厳守
 どんなに良い話ができても、与えられた時間内に話を収められなければ、講師失格です。
 とくに主催者(企画側スタッフ)は、終了時間をひじょうに気にされます。

 自らに「1分オーバーで20点減点」を課しています。ですから、大甘の自己評価で「だいたい80点の出来だったな」と感じたときでも、4分超過したら結果は0点です。

 緊張が緩むと、時間が延びがちになります。あらかじめ章ごとにラップタイムを設定しておいて、時計を横目で見ながら「尺に合わせる」よう話をしています。
<その3> できるだけ平易に
 ともするとスペシャリストを気取って「専門用語で煙にまく」ような愚を犯しがちです。

 私たちの講演は、初学者をターゲットにしていますし、総務部門など非知財職の参加者も必ずおられます。

 「〇〇を担保する」「権利化/秘匿化の判断には、まず発明の顕現性を考慮すべき」「従業員の予見可能性を…」「図利(とり)加害目的で…」「善意無重過失で取得した場合…」等々、聞いただけでは頭に漢字と意味が浮かばない業界用語や役所言葉を連発し、聴講者を「置いてけぼり」にするなど、不親切の極みでしょう。話しぶりまでが独善的になってしまいそうです。

 口頭の説明では「専門(業界)用語は極力避け、可能な限りやさしく」を心がけています。
<その4>「伝わったか」の確認

<その4>「伝わったか」の確認
 テキストや話し方で、どんなに「伝える」努力や工夫をしても、結果、それが聞き手に伝わっていなければ意味がありません。講演・研修は、たいてい壇上から語りかけますから「上から目線」「一方的」になりがちなシチュエーションでもあり、尚更です。毎回、講演後にアンケート記入等で会場に残っておられる受講者を捕まえて

  • 講義で分かりにくかった項目
  • テキストの要改善箇所

などについて具体的に指摘してもらい、その内容を次回に反映させるようにしています。

 趣味で、テケテケと下手なエレキギターを弾いています。
 バンド活動では、演奏の巧拙とは別次元で「こいつ練習して来なかったな」は、他のメンバーにスグに見破られます。「1日練習しなければ自分に分かる。2日練習しなければ批評家に分かる。3日練習しなければ聴衆に分かる。」
 教育者、著述家でもあるフランスの高名なピアニストの言葉です。胸を張って「どんな聞き手にも、じゅうぶん納得してもらえる内容だった」というレベルに達していると言い切れる自信は、まだありません。「まあ、この程度で良いか」という妥協、手前味噌の評価がマンネリ化を招きそうです。

 昨日より今日、今日より明日と一つずつでも改良を加えながら、より「伝わる講演」にすべく、日々工夫を重ねています。

 

第3回 「秘密を守る」とは/小原アドバイザー

愛社精神の落とし穴

 日本の企業では、新入社員から経営トップまで「愛社精神」が旺盛です。

<営業マンは>
・展示会での説明/営業プレゼン/取引先への売り込み
<技術者は>
・展示会での専門的な質問への積極的対応/営業に同行した技術プレゼン/仕入れ先指導・外注指導
<経営トップは>
・トップセールス/表敬訪問時の土産話/社外への苦労話・自慢話披露
<工場スタッフは>
・取引先の監査・立ち入り/工場見学者の受け入れ

など、日常的にさまざまな他者(社)との接触の機会があります。
そういった場面で、自社の売り込みや、技術アピールに熱心なあまり、前のめりになって「必要以上に」説明してしまう傾向があります。
しかも、従業員それぞれが、その場の自己判断で「秘密保持契約を交わさず」に、だいじな企業情報を開示してしまうようなことが起こりがちです。秘密情報は一度流出してしまうと、取り戻すことは、まず不可能です。

 最近、自社ホームページ上で動画を用いて技術力をアピールしようとされている企業様が多いように思います。その動画を拝見すると、ほとんどの場合「出し過ぎ」の傾向があります。中には、背景にノウハウの塊である虎の子の内製化装置や冶工具が写っているような 「頭隠して尻隠さず」 のケースもありました。

 企業人として「会社を思う気持ち」は、とても尊いものです。愛社精しんが日本の産業を支えてきたことも事実です。
しかし、上に挙げたさまざまな例は、「情報という無形資産に関して脇が甘い」という日本人の特質もさることながら、「目先のことばかりを意識するあまり、(営業・技術情報が流出している意識をまったく持たずに、長い目でみると)会社に重大な損害を与えているという認識の欠如」から起きるものです。

 どの会社にも、そして新入社員から社長・会長に至るどの階層の従業員にも内在するこれらの悪弊を払拭するためにも、「営業秘密管理体制の構築」が必要なのです。

 

第2回 アドバイザーの嗜み/小原アドバイザー

キホンは「下から目線」

 私は約二年半前、家電メーカーのサラリーマンから現職に転じました。

 そのとき、永年薫陶を受けた会社の大先輩から「新天地ではクチが裂けても『ウチでは…だった』と前職と比較したり、聞かれもしないのに『◯◯電気におりました』などと決して語ってはいけない。それが大人の転職者の嗜みだぞ」と忠告されました。

 また、関西淡路大震災後の中小企業復興事業に携わった学生時代の別の先輩からは「人間には『他人の自慢話を聞かされるのは大嫌いだけれど、己の自慢をするのは大好き』という習性がある。会社の相談を受ける仕事は『下から目線』で経営者から本音を引き出すコトに尽きる。アドバイザーが初対面の相手に、真っ先に自分の過去(その手の話は、とかく盛ってしまいがち)を得意気に語るのはタブーだよ」とも言われました。

 さらに、INPITに来てから企業支援業務の先輩から、過去の実務経験に基づいたアドバイスをするときに「その情報は、いちばん新しくてもお前がアドバイザーに転じた2~3年前の『古いもの』であることを忘れず、つねに最新情報にアップデートする努力を怠ってはいけない」と助言されました。

 中小企業の経営者には即断即決タイプが多く、最初の2~3分の第一印象で、こちらの「人となり」を値踏みされてしまうコトが多い様に感じます。

 「前職で私は…」とやってしまいそうな自分を抑えながら、相談企業の実情をポイントを逃さず正確に引き出すために、常にアンテナを拡げ、自己研鑽し、過去の経験を土台にした「最新の自分」で語れるよう、先輩氏の教えを肝に銘じ、日々活動しています。

 

第1回 はじめに/小原アドバイザー

フーテン?のアドバイザー
 工業所有権情報・研修館(INPIT)に営業秘密・知財戦略相談窓口(通称:”営業秘密110番”)が、サービスを開始してから、おかげさまで2月で二周年を迎えます。私たちINPIT知的財産戦略アドバイザーは、2015年2月のサービス開始以来、3名体制で全国各地の様々な団体が主催する知財セミナーの講師、電話などによる個別相談対応、および企業様をご訪問しての営業秘密管理体制構築のお手伝いなどを主な業務としています。

 スーツケースを引っ張り九州の小さな連絡船で移動中のスナップを知人に送ったところ「お前の仕事は、車寅次郎みたいだな」と言われました。たしかに、各地の集会で口上を述べ、中小企業のオヤジさんたちの悩みを聞くのが私たちの仕事の中心ですから、寅さんとの共通点があるかもしれません。

 たまに「小原先生」などと、声をかけられ戸惑うときがあります。寅さんが、旅先で、教養ある知識人と勘違いされ「車先生」などと呼ばれるシーンが、映画にもありました。各地で様々な人たちと触れ合い、新しい発見、新たに学ぶことが少なくありません。そのなかで、気づかされたこと、教えられたことを、何回かに渡ってご紹介したいと思います。
中小企業にとって「知的財産」とは
 私たちが扱っている「営業秘密」は、知的財産の一つです。
営業秘密の説明をはじめようとすると、「そもそもオレたちは知財がよく分かんないだから、営業秘密なんて興味もないし、もし取り組むとしても先の先」というような反応を示される中小企業の幹部が少なくありません。
また、知的財産をひととおり学ばれていても、間違った理解をされている方が結構おられます。

 以下が、よく耳にする「誤解」(の一部)です。
・素ばらしい自分の発明が特許登録された。なにもしなくても他者からライセンス希望が殺到し、大金が転がり込むはずだ。
・一度特許化できれば絶対である。
・展示会出品後でも権利化できる。
・製造・計測技術も、すべて特許で守るべきだ。
・プログラムは、特許権利化できない。
・口頭の秘密保持義務でも安心だ。
・契約を締結すれば、技術流出を防止できる。
・秘密保持契約を締結すれば、相手にすべて打ち明けても安心だ。
・買い手の仕様による特許侵害は免責される。
・従業員の発明は、当然会社のものだ。

 これらの「誤解」は、イコール「事業リスク」と考えても良いでしょう。
契約についての思い違いが、多いのも現実です。

とくに、「技術が命」のメーカーでは
■(特許、意匠、商標など知財に関する)権利
■(他者との)契約
■(営業秘密として守るべき)技術ノウハウ
の三本柱で、経営を考えていかねばなりません。

 事業で重責を担う経営幹部のみなさまには、まずこのことに気づいて欲しいと思います。

 

[最終更新日:2019年8月5日]

[この記事に関するお問合わせ先]
知財戦略部 営業秘密管理担当
電話:03-3581-1101 内線3841
営業秘密・知財戦略相談窓口へのご相談はこちらをご覧ください。